留学
何でもない土曜日を過ごし、さらに何でもない日曜日を過ごして月曜日。
僕は何でもない平和な学校生活を送るつもりで高校へとやってきていた───そう、送るつもりであった、である。
「えー、日本政府からの要請により、我々の学校から数人ほど、陰陽師たちが通っている学生への留学生のような形で生徒を送ることになった」
「……へぇー」
朝のHRの時間、教卓に立つ担任の先生の言葉に僕は小さく言葉を漏らす。
「えーっと、うちのクラスからは二人ほど出すように指示を受けていてな。まず一人が、既に陰陽師であるという有馬で確定なんだが……その他は一体だれがいい?」
完全に取り込みに来ているじゃん。
もう僕を追放したことをなかったことにするつもりなのかな?まぁ、ぶっちゃっけ、僕にとって陰陽界なんてどうでもいい。
さほど重要なものでもないので、僕の邪魔をしない限り、自分が陰陽界に属していることになっていようと、いなかろうとどっちでもいいけど……そもそもの話。
僕を陰陽界へと再び招き入れるのに賛成な陰陽師って少ないと思うんだけど、特に僕の父。
「だ、誰もいないなら私が。既に怪魔とも接触しているし、陰陽師の方とも接触しているので。私が適任だと思います」
「ありがたい……今回の件は色々と不透明なことが多くてな。未だに怪魔についても、日本にずっといたという陰陽師についても中々わからないことが多くてな。みんな少し、及び腰でな」
「大丈夫ですよ。任せてください」
僕が内心でここらの動きについて首をかしげている間にも、どんどんと話が進んでいた。
どうやら、佐藤さんが僕と一緒に陰陽師の学校へと行くもう一人の生徒に決まったらしい。
「まぁ、危険なことは僕がないようにするから安心していいよ」
陰陽師たちは閉鎖的であるが、それでも一般人を自分たちが救い、平穏な生活を守り続けるのだという確固たる自負を持っている。
そんな連中が一般人に手を上げることなど万に一つもないだろうが……まぁ、あったとしても僕なら何とか出来るだろう。
早紀とかをこき使えばどれだけ遠距離になろうとも問題ないだろうし。
「ありがとう……」
「と、いうことで話はこれで終わりかな?」
ちょっと朝から自分へと陰陽師について聞きたいなぁーというクラスの期待の視線を受けていることも僕は察している。
が、ちょっと説明するのが面倒な僕はそれを避けていた。
そして、ここでも陰陽師について説明する必要がないよう、早々に陰陽師関連の話を終わらせにいくのだった。
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