公開

 窓から暖かな光が入ってくる昼下がり。

 僕が作ったパスタを婚約者である神楽とダラダラしながらつつく。

 そう、そんな何でもないただの平和な土曜日───だったはずの今日。


「おぉー」


「……わぁ」


 たまたまテレビをつけていた僕たちの目には国際連合からの大発表のニュースが流れていた。


「結局のところ公表したんだねぇー」


 国際連合からの発表。

 それは怪魔のことであったり、それと長年戦っている各国の組織の存在を公表するものであった。

 それに合わせて、日本政府の方も陰陽師たち、陰陽寮の存在を正式に公表していた。

 まぁ、ほとんどその組織図やら人員についての報告はほとんどないけどね。公表しているのは既に自分の配信で表舞台に立ってしまっている早紀たちだけ……既に追放されている僕もちゃっかり陰陽師の一員であると発表しているのは目を瞑ってあげよう。

 僕は寛大だからね。


「……うぅ、この事態を引き起こしたのが私の隣にいて、なおかつすっごい他人事みたいなこと言っているよぉ」


「ふふふ、既に君もこちら側なんだよ?」


 自分の隣で頭を抱えている神楽へと僕は優しく笑いかけながら声をかける。


「うわぁー、私は一応スパイとしてここにいるのにぃ」


 それを受け、神楽の方は更に大きく頭を抱える。


「おっ?今、ここになっても僕と敵対しちゃう?」

 

 そんな神楽へと僕は更に意地悪く言葉を続ける。


「うぅ……もう、辞めてよぉ」


 そんな僕に対して、神楽は不満げに声を上げる。


「ふふふ」


 僕はそんな神楽を少しばかり笑いながら自分が作ったパスタをフォークで巻いて口を運ぶ。


「もぉー」


 そんな僕を見て、神楽は更に不満げな様子を膨らませながら彼女の方もパスタを口へと運んでいく。


「ん~、美味しい」


 そして、パスタを口に運ぶとすぐに神楽はさっきまでの不満げな態度を一変させて幸せそうな様相を見せる。


「それなら良かったよ」


 僕はそんな神楽を見て頷き、そのまま自分のパスタの方を食べ続ける。


「んー、それにしても私たちはこんなにほんわかしていいのかしら?」


「別に良いでしょ。僕も、君も、陰陽界の方から一歩引いているし、向こうはこれからてんやわんやだろうから神楽の方もほとんど触れられないと思うし。やることもないよね」


「……まぁ、私はほとんど生家の方に期待されてないからねぇー。楽だからいいんだけど」


「そうそう。僕たちは楽に生きていればいいのさ。陰陽界の面倒なところとか関わりたくないよね」


 陰陽界のことなんて割とどうでもいい。

 一大事と言える今回の公表に関しても、僕はさほど関心を払わずに神楽と一緒にパスタをいただく。

 結局のところ、今日は何でもないただの平和な土曜日であった。

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