有馬

 自分の幼馴染である早紀。

 彼女を強く認識したのは自分の母親と彼女の母親が同じ任務で死んだときだった。


「……ちっ」


 気に食わない。

 その気持ちは一番最初に会ったときからずっと思っていた……だが、明確な嫌悪感を覚えたのはその時だった。

 この女は自分以外のすべてを同じ人間として見ていない。

 そうはっきりと理解できたのがこのタイミングだったのだ。

 常に他人と接するときは上からで、自分と同格として扱っていない。

 そればかりか、あれだけ早紀を可愛がっていた僕の母親が死んでも、早紀は一切気にもせず、あれだけ愛に満ちた美しき彼女の母親が死んだときも悲しみを引きずっていなかった。

 早紀は、これまでの間、一度たりとも自分の母親の墓参りをしたことすらないのだ。

 そんな女に対して、どうやって嫌悪感を覚えずにいろというのか。


「……許せない」

 

 そして、何よりも僕という存在が、自分よりも格上の存在を何としてでも認められなかった。

 

「必ず僕は君の隣に立ち───そして、必ず超えてみせる」


 早紀を確実な形で超え、あいつを上から見下ろしてそのまま母親の墓の前へと引きずっていく。

 その目的のため、今日も僕は己を鍛え続けるのだった。

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