一当たり
怪魔の王。
そう僕たちの前で名乗りを上げた異様な怪魔。
「「……」」
それを前にする僕と早紀は静かに警戒心をあらわにする。
「さて、と……僕はこれからどうしようか」
このまま怪魔の王へと殴りかかってもいいけど……。
何となく相手は会話できそうだから、このまま会話で色々なことを聞き出すのもありっちゃありだと思うが……。
「怪魔の王。このダンジョンを作ったのはあなた?」
そんなふうに悩みを見せていた僕の横で、早紀は一切迷うことなく核心的なことへと突っ込んでいく。
「ほほぅ!我に相対し、言葉で優位を得ようとするか!」
「えぇ、悪い?」
「悪うないとも!それも一興よ!」
早紀の言葉に怪魔の王は楽しげにしながら口を開く。
「では、答えるとするならばそれは否だ。だが、利用は出来ると判断した」
「へぇ?」
僕の隣で怪魔の王と早紀が言葉による交渉を行っている。
そんな二人の隣で僕が降す結論なんてたったひとつしか無かった。
「よし、殴るわ」
僕は一切の迷いなく行動を開始。
その場を力強く蹴り、一瞬で怪魔の王との距離を詰めて拳を振るう。
「おぉう!?」
僕の拳。
「流石に本体じゃないこともあって脆い上に殴った感触も実に歪」
それは確実に怪魔の王の体の、ほとんど半分を消し飛ばして見せた。
「ほほぅ!人の子よ!我とやるか!」
僕に殴られてもなお、怪魔の王は一切揺らぐことなく楽しげな態度を保ちながら声を上げる。
その間にも、僕の拳によって消し飛んでいた怪魔の王の体は再生しきっていた。
「そっちの方が早いでしょ」
そんな怪魔の王に対して、僕は簡潔に答える。
「かっかっか!それも真理よ!よかろう、この仮初の肉体で遊んでやろうでは無いか!」
それを受け、怪魔の王はゆっくりと体を構えて拳を握る。
「男たるもの!拳で語り合うのが筋というものよ!」
「んー、まぁ、そうだね」
僕は怪魔の王の言葉に頷き、そのまま彼に合わせるようにして拳を構える。
両者共に戦う準備は整った。
「……何をしているの?」
僕と怪魔の王を見ながら早紀は呆れた様子で言葉をあげる。
そんな早紀の表情からは、会話で情報を少しでも集めればよかったのに……、なんていう考えを読み取れることが出来る。
ふふふ……僕が早紀の思惑にそのまま乗っかるなんてことするわけないじゃないか!
「行くよ?」
僕は早紀のことを無視して怪魔の方へと意識を集中させ───。
「来たまえ!人の子よ!」
不敵に笑う怪魔の王へと果敢に飛びかかって行くのだった。
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