怪魔の王
まさしく順調だった。
僕は効率よく、順調に怪魔たちを倒し続け、この場にいる怪魔の数を減らし続けていた。
そんな中だった。
「……あん?」
この場全体の圧力が跳ね上がったのは。
『ここまで飛びぬけた人の子の個体が存在するとは……』
そして、そのままこの場へと妙に重たく、威圧感のある言葉がこの場に響き渡ってくる。
「……っ」
少しばかり不味い。
そうすぐさま判断した僕はその場から一瞬で退いて早紀の隣にまで退却してくる。
「この声は何か知っている?」
そして、そのまま早紀へとこの声について何かを知っているか尋ねる。
「知らない」
そんな疑問に対して返ってきた早紀の言葉は僕の望んでいたようなものではなかった。
呪無しとして、冷遇されている僕と違って、現代最強とされる陰陽師である早紀であっても知らないのか。
「……そうか」
早紀の言葉に頷いた僕はそのままここで何が起こるのかを静かに眺める。
『ふふふ……そう警戒することもない。これはただの軽い顔合わせだとも』
そんな中で、再度さっきの声が響いてくると共に、僕たちの目の前にいた怪魔たちの体に異変が起き始める。
「……ッ!?オ、王ッ!オ待チヲッ!?」
「ォォォォオオオオオ」
「王ヨ……我ラハココデ終ワリナノデスネ」
「アァ……人ヲ食ロウテ、見タカッタ……」
怪魔たちの体が一気に溶け始めて唯の液体となり、そのまま静かに液体が一つの場所に集まって大きな水たまりを作り始める。
「来るよ」
そして、そのまま水たまりが大きく盛り上がった。
「はっはっはっはっはっはっ!」
怪魔たちであった液体が作り上げた水たまり。
そこから一つの強大な怪魔、否。ただの怪魔とは大きく異なるように思える強大な怪物であった。
「これは褒美だっ!強き人の子!我の策を打ち破った貴公らへの褒美!我との謁見の機会を授けようではないか!」
「「……」」
そんな怪魔はノリノリの態度で、元気よく声を上げる。
「我こそは偉大なる怪魔の王!怪魔の王なり!さぁ、人の子よ!控えおろう!」
王然とした態度で、尊厳に、傲慢に言葉を告げる怪魔。
「何かわかる?」
「少しは」
それに対して、僕と早紀はどこまでも冷淡に現状の分析を進めていく。
「……本体はここにいない」
「かもね」
僕には何の感知能力もなく、相手が本体か本体じゃないかなんてわかるはずもない……が、それはそれとして第六感で怪魔の王を名乗る目の前の輩が本体ではないことをなんとなく察した僕は早紀の言葉に頷くのだった。
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