武器
突然理不尽に切れだした僕を見て困惑の表情を浮かべている早紀。
「もー、これから僕も君に負けないように奮起しよう!としていたところだったのにぃー」
だが、僕はそんなことも気にせず勝手に言葉を続ける。
「別に私を越えようと奮起して動くだけならこの後でも問題ないはず」
「出鼻をくじかれるのはまぁまぁ、萎えるでしょ。まぁ、だからといって何か行動を変えたりはしないけどね……ひとまず、僕が戦うから早紀は下がっていていいよ」
早紀の実力であればさっきの交戦である程度分かっただろう。
これ以上は見せる必要ないし、蛇足にしかならんだろう。一応早紀は我ら陰陽師の切り札であるのだ。
手札だってそこまで大っぴらにするようなものでもないだろう。
「わかった。選手交代だね」
「そういうこと」
僕は早紀の言葉に頷くと共に地面を蹴る。
そして、一切の迷いなく怪魔たちの方へと突っ込んでいった。
「つぃえぁっ!」
僕に出来ることなどただ一つ。
拳を固めて振り抜く。
ただそれだけ、呪力も、術式もない僕に出来るのはただの肉弾戦だけである。
「ゴボォ」
僕は自分の前にいる怪魔を殴り飛ばして消滅させ、その風圧だけで周りにいた怪魔たちも一緒に倒していく。
怪魔は死すると同時に光の粒となって消えていく。
拳を振るだけで大量の光の粒がこの場にまき散らされていく。
「……流石に効率が悪いな」
拳一つを振るだけで同時に何体も倒している僕は自分で言うのも何だが、間違いなく凶悪だろうと思う。
だが、それでも大量の敵が相手だと中々に効率が悪かった。
「おらぁ!武器げっとぉ!」
「オ、オォ……ッ」
少し悩んだ後、僕は目の前にいる怪魔の体の中へと手を突っ込み、そのまま勢いよく引っこ抜く。
そんな僕の手に握られているのは怪魔の長い、長い腸であった。
「ふんっ!」
怪魔の腸を手に持った僕はそのまま勢いよくこの場で一振り。
自分の周りにいた大量の魔物がそれによって消し飛んでいく。
「……まっ、消えるか」
その一振りを終えると共に腸を引き抜かれた怪魔が息絶えたことで、自分の手にあった腸も光となって消えていってしまう。
だが、それでもさっきので数十体は屠ることが出来た。
よし、これからはこれで敵の方を攻め立てていこう。
見た目はかなりグロいが……これが最も効率的なのだ。
「ほらほら!まだまだ僕はこんなものじゃないぞっ!」
僕は次々と怪魔から腸を引き抜いては振り回し、腸を引き抜いては振り回しをひたすらに続けるのだった。
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