陰陽師最強

 第六感。

 ただのシックスセンテンスだ。

 だが、己が最も信ずる自分の直感より、僕はなんとなく今、早紀がどこにいるのかを把握できていた。


「ここだな」


 僕は自分が潜っていた最深部の階層。

 そこから三つほど僕は下に降りていく。


「……見つけた」


 早紀の姿はすぐに見つけることが出来た。

 僕がやってきたこの階層。

 そこは既にダンジョンの階層全体が魔界の中へとなっており、その魔界の中では空を大量の怪魔たちが待っていた。


「……ど派手だし、多いし」

 

 この場にいる怪魔の数はべらぼうに多く、先ほど僕が戦っていた階層の数十倍。

 そして、怪魔一体一体の実力もあの場にいた怪魔たちのトップクラスであった。


「……やべぇー」


 こんな大軍勢を相手に早紀はたった一人で挑み、それで苦戦するどころか大量の怪魔を外に打ち上げていた……うん、化け物かな?


「……コッチナラッ」


 そんなことを考える僕の元にも怪魔たちが集まりだし、こちらへと襲い掛かってくる。


「ふんっ!」


 そんな魔物を僕は拳一つで消し飛ばしてみせる。


「せい、やぁー、とぉー」


 そして、そのまま流れるような拳で大量の怪魔を悉く粉砕してみせる。


「グ、ググ……コチラモカイブツ。ヒ、ヒトガ、ココマデ」


 一瞬にして怪魔を粉みじんにした僕を前に怪魔たちが動きを止める。

 今のうちに準備運動でもしておこうか。


「僕も負けていられないよねぇ」


 化け物であることは認めよう。

 いや、むしろこれくらいでなければ張り合いもない……超える壁が大きければ大きいほどに滾ってくる。

 僕は準備運動をしながら、そんな風に思考を回していく。


「ふー」


 まずはここだ。

 ここで怪魔を殺し、早紀へと近づく経験を積もう……必ず、僕が彼女を超えてみせるのだ。

 少しでも、少しでも彼女との距離を詰めるため、出来ることをすべて行う。


「よし」


「……ッゴク」


「……オ、ォオオオオオオオ」

 

 僕は自分の前で警戒心をあらわにする怪魔たちへと敵意を見せ、無双せんと拳に力を止める。

 ちょうどそんなタイミングで。


「……はい?」


 僕の前にいた怪魔たちが全員消し飛んで消滅する。


「……有馬。来てくれたんだね」


 そして、怪魔が消し飛んで出来上がった長い道を堂々たる態度で歩いてくる早紀がこちらへと声をかけてくる。


「ざっけんなっ!?空気よめぇや、ボケェ!」


 そんな彼女に対して。


「えっ……?なんで?何で私は今、怒られたの?」


 僕は理不尽にも怒鳴りつけ、それを受ける早紀が困惑しながら声を上げるのだった。

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