コラボ

 コラボとは言ってもそこまで難しいことをするわけではない。


「さて、と。覚悟は出来た?」


 コラボの誘いを受けた三日後。

 土曜日の昼下がりに僕は佐藤さんと共にダンジョンへとやってきていた。


「は、はい……出来てます!」


 僕の言葉に佐藤さんは力強く頷く。


「別に敬語じゃなくていいからね。それで……えっと。配信者としての名前はフラワーでいいんだっけ?」


「は、はい!そうで……うん、そう、だね」


「おけおけ」


 花梨だから花でフラワー。実に安直だな。


「有馬くんの配信者名はステイトだよね?」


「うん、そうだね。配信中はそう呼んでくれると」


「うん、わかったよ」


 僕の言葉に佐藤さんは頷く。


「よし、それじゃあ今日の配信内容の確認と行こう」


「はい!えっと……有馬くんが初心者である私にダンジョンの潜り方を教えてくれる、っていう配信内容なんだよね?」


 僕の配信タイトルは『初心者必見!初心者の女子クラスメートと行くダンジョン講座!』となっている。

 

「うん。そうだね。まぁ、本当に初心者向けでやっていくつもりだから、気張る必要はないから安心していてほしいかな」


「私のためにありがとうね」


「んっ。別にいいよ。僕も初見さん呼び込むのに使えそうだし。何よりもどうせ土曜日になんてやることはないしな。まぁ、最初に話すのはここら辺にして早速始めていこうか」


「う、うん!」


 自分の言葉に佐藤さんが頷いたことを確認した僕は既に配信準備を終わらせていたドローンを操作して配信を開始させる。

 今、ドローンの上には僕のと、佐藤さんのとで二つのスマホが設置されている。


「はーい。どうもみんなこんはろばー。配信来てくれてありありぃー」


「こ、こんはろばー」


 配信を開始させると共に行うのはまず挨拶である。

 

 コメント

 ・こんはろばー!

 ・おー、マジでコラボ相手いるじゃん!

 ・こんはろばー!

 ・こんはろばー。

 ・とうとうボッチじゃなくなったか……。


 挨拶が行われると同時にスマホのほうに大量のコメントが流れ始めていく。


「はーい。ということで今日は自分の隣にいる彼女、フラワーと一緒に初心者が知ってほしいダンジョンの歩き方講座をやっていくよ。自分の元にダンジョンを潜る上で注意するべきところは何ですか?っていう質問結構来るからね。もうそれらの質問をすべて今回の配信で理解させちゃうよ」


「よ、よろしくお願いします!」


「はっはっは。一応僕も大手配信者だけど、別に配信活動を重要視しているわけじゃないし、どれだけ炎上しようともそよ風だし、緊張せずにやってくれればいいよ。ダンジョンを潜る上で注意してほしいことの一つに緊張しない!ってのもあるからね」


「う、うん!わかったよ!」


「よし、いい返事だ。それじゃあ、実際に潜っていこうか」


 佐藤さんの良い返事に頷いた僕はダンジョンへと潜っていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る