コラボの誘い
ダンジョンを最速で潜っていっている僕の財力は底なしだ。
というのも、まずダンジョンとは広大な資源の塊なのだ。
石油の代わりになる魔物の血。食料となる魔物の肉。地面に転がっている鉄や金、レアメタルなどの鉱山資源。時折地面に重ねて置いてある木材。
ダンジョンにはありとあらゆる資源があり、ダンジョンだけで原材料が賄えるようなところなのだ。
僕はダンジョンを潜る中でこれら資源を回収することで儲けているのだ。
そして、僕の資金源はそれだけではない。
ダンジョンに生息している魔物は非常に危険なのである。
人類に問答無用で襲い掛かる狂暴性に、人間を簡単に倒せる反則的な力。
この魔物の手によって殺された者たちは多く、魔物と戦うなど危険としか言えない。
だが、だからと言ってダンジョンを放置するのも危険なのだ。
ダンジョン内の魔物を駆除しなければ、そこから魔物があふれ出して地上へと侵攻してくるのである。
それのせいで既に多くの国が滅んでしまっている。その土地を魔物に奪われ、国民を皆殺しにされる形で。小さな島国などはもう絶望的である。
世界各国はこの事実を見て積極的に自国のダンジョンの魔物掃討に動いており、日本政府は僕のようにダンジョンで魔物を倒していっている冒険者たちに報酬としてお金を渡してくれるのだ。
この二つが僕の収入源であり、その二つがもたらす収益は僕をお金持ちにするのだ。
「……んっ」
そんな大量のお金を用いて僕はタワマンの一室である自宅にトレーニング室を設けていた。
寝起き一番、まず真っ先にこのトレーニング室へと来て自分の体を鍛えていた僕は深々と息を吐く。
「今日もいい汗流したな」
トレーニング室で十分に汗を流した後の僕はお風呂へと赴き、自分の汗を綺麗さっぱり流す。
「……起きろよ、女」
「んっ……う、ぅん……」
その後、寝室で僕が出た後もぐっすり眠りこけている神楽へと声をかけながら一切の遠慮なくカーテンを開け、彼女が抱いている布団を強引にはぎ取る。
「あぁ……」
「朝ごはん出来ているからな。勝手に食べていろよ」
最低限のことをし終えた僕は寝室から出て洗面所へと向かい、トレーニングの前に動かしていた洗濯機から洗濯物を取り出してベランダへと向かう。
「いただきます」
ベランダの方で洗濯物をすべて干し終えた後、今度はキッチンの方へと向かってこれまたトレーニング前に作っていた朝食を食べ始める。
「ごちそうさま」
朝食でガッツリとしたものは作っていない。
軽く食べ終えた僕は食器を水に浸けてシンクに置く。
いつも朝やっているルーティーン的なものをやり終えた僕は玄関の方へと向かう。
玄関には昨日のうちから準備を終わらせていた高校に行くためのカバンに制服が置いてある。
「よっと」
僕は玄関で制服へと着替え、高校指定のカバンを背負う。
これで高校に行く準備は万全だ。
「うし、行くか」
しっかりとやるべきことをやり終えた僕は玄関を出て、高校へと向かうのであった。
■■■■■
高校生活は基本的に変わりない。
「あのアニメ見たよ、師匠。面白かったね、あれ」
「あー、俺も見たな。マジで良かったよな」
「ほぉー!見てくれましたか!良きかな良きかな!御二方に面白いと言って貰えて良かったですぞぉ!」
午前の授業が終わった後の昼休憩。
僕はいつものように明楽と師匠のふたりと共にアニメの話で盛り上がっていた。
「あ、あ、あ、あのっ!」
そんな中で、僕たち三人は自分たちの横に立っていた一人の少女から声をかけられる。
「す、少し……いいですか?あの、有馬くん」
おっと、声をかけてきた少女の尋ね人は僕か。
「ふ、ふぉふぉふぉ、女子、ですか……小生は女子が苦手ゆえ、ここらでひとまず」
「何かな?」
女性慣れしていない師匠がこの場から脱兎のごとく逃げ出したのを横目に、僕は話しかけてきた少女へと疑問の言葉を投げかける。
「あ、あの!わ、私と!コラボしてほしいんですっ!」
そんな僕へと目の前にいる少女は少し震えた声でそう告げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます