帰宅
「あぁー、つっかれたぁー!」
宮廷陰陽殿から家に帰ってきた僕は荷物を適当に床へと投げ捨ててソファへとダイブする。
別に肉体的に疲れるようなことはしていないけど、精神的に疲れた。
やっぱあれだな……まだまだ早紀は遠いな。
自分の隣に座っている早紀を何とか殺せないかと頭の中で思考錯誤し、隙を伺い続け、何も出来ず、何も動けずに終わった僕はそのくやしさを胸に抱く。
あまりにも、今の僕と早紀とでは差があった。
「……だけど、必ず超える」
幼少の頃からの誓い。
必ずや自分の幼馴染である早紀を超え、あいつにとっての花から人間となる。
その決意を再び僕は内心で固める。
「お疲れ様。今日は遅かったね。何していたの?」
そんな僕へと神楽が近寄ってくる。
「宮廷陰陽殿の方にね。ダンジョン関連でちょいと僕が呼ばれてね。何でも、ダンジョン内であっても怪魔は封印を外れるみたいだね。ダンジョン内で魔界の穴が開いて、危うく大惨事になるところだったよ。ダンジョンが怪魔たちの拠点になりかねなかったね」
「えっ!?」
そんな神楽へと返す僕の言葉にを受け、彼女は心の底からの驚愕の声を上げる。
「そこらへんの対策で僕が呼ばれた。まぁ、喧嘩を売るだけ売って帰ってきたけど」
「えっ……?」
そして、今度は絶望が混じった声を上げる。
「どうしたよ」
そんな神楽へと僕は疑問の声を上げる。
「それって……もしかして、私の方にも連絡きたりするかな?」
「知らんけど、来るんじゃない?君がどこまで上から信頼されているかによるけど」
「あっ、じゃあ……ダメだ」
「いや、君の想像とは逆だと思うよ」
「えっ……?」
神楽の存在を重要視している者はいないだろう。
恐らく、彼女が巻き込まれることはないと思う。
神楽に何かを聞いても、何の有力な情報は出ないだろうし、それを上の陰陽師たちもしっかりと認識しているだろう。
「まぁ、ここら辺に関しては君が心配することじゃないよ。さっ、飯にしようか」
僕は話を切り替えて立ち上がる。
「よっと」
僕は自分が投げ捨てたカバンを拾いあげると共に、神楽の方が適当に散らかしたものを拾い上げていく。
「もう少しは片付けろよな……」
元々、神楽はあまり片付けとかできなかった側の人間だが、スパイ行動がバレていると知ってからは一層ひどくなっている。
「へ、へへ……好かれる女を演じる必要がなったと思ったら、その、色々と緊張の糸がほぐれたこともあってちょっとだけだらしなくぅ……」
「……お前の好かれる女像もちょっとおかしかったけどな」
「えっ!?」
僕は神楽へと辛らつな言葉を返しながら軽く物の片づけを終える。
「よし、夕食作るけど何がいい?まぁ、冷蔵庫の中にある物次第だけど」
そして、僕は神楽に夕食の内容を尋ねながらキッチンへと向かうのだった。
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