陰陽頭
広大な大広間。
そこに勢ぞろいしている各陰陽師家の名家の当主たちが勢ぞろいしていた……何で中々揃うことのない名家が当主たちの集まりに僕が呼ばれているの?
僕は現状に対して疑問を抱きながらも、堂々たる態度でずんずん進んでいく早紀の後を追って歩みを進める。
「……」
「……」
「……」
すっごいアウェーだなぁ……自分を追い出した一条家の当主までいるこの場で感じられる己のアウェー感は尋常なく、明らかに歓迎されている雰囲気ではなかった。
マジで何で呼び出されたの?僕。
呼び出された身なのに、こんなアウェーなの中々ないでしょ。
「……」
凄まじい不満を感じながらも僕は陰陽師界の長が為に用意された御帳台の前に座った早紀の隣へと腰を下ろす。
「お越しいただきありがとうございます。有馬様」
そのタイミングでこの大広間の司会者的な立ち位置で立っていた男が陰陽術で自身の声を拡散しながら声を上げる。
「うむ」
そんな男の言葉に対して、僕は横柄に頷いてみせる。
「……っ」
その瞬間。
明らかにこの場の雰囲気がより最悪なものとなり、自身の後ろにいる多くの名家当主たちから殺気が沸き立ってくる。
もう僕に声をかけた男は堪えきれなくなって明らかな怒りを表情に浮かべてしまっている。
いや、返事一つでイラつくなら僕を呼ぶなや。
悪いけど、僕は一切陰陽界にへりくだるつもりはないからね。
「落ち着きなさいな」
僕と各名家の当主たちとで明らかな不和が流れていたその瞬間。
御帳台の向こう側から一つの凛とした声が響いてくる。
「「「……っ!?」」」
その一声が僕たちに対して大きな驚きを与える。
普段、あまり感情を表に出すことのない早紀までもが驚愕に目を見開くほどだ……えっ?今、御帳台の向こう側にいる陰陽頭が喋った?
えっ?初めて聞いたんだけど?声、喋れる側の人間だったの?
え、ええっ……?うっそぉー。
本当に驚きなんだけど。
「その子は私が呼んだ客やよ?歓迎してな」
僕を含め、この場にいる全員が驚いている間にも陰陽頭が言葉を続けていく。
そして、その声はまさに鶴の一声となった。
一気に僕へと向けられた敵意は霧散し、一触即発の雰囲気は消える。
陰陽師たちにとって、陰陽頭の言葉はかなり重いのである。
心の内はどうだが知らないが、ひとまずは収まったのだ。
「えー、それでは今回集まってもらった議題について語っていきましょう」
そして、雰囲気が落ち着いたところでゆっくりと司会の男が口を開くのだった。
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