第4話 武器コンテストと忍者

第4話ー1 のじゃロリ猫耳エルフ忍者登場


 素材となるクイーンマインの肉片を鍛冶屋通りのみんなで分配し、早速宣伝活動が始まった。

 

 まずはオークションに出品し、値段を付ける。

 天然素材のマテリアル鋼は非常に珍しい。

 討伐そのものが難しい鉱山喰いマインイーターのモノとなれば、伝説のドラゴンほどではないがそれでも剣1本分くらいの分量で金貨200枚程度にはなった。

 

「もうこれ全部売って借金返したら良くない?」

「アホか。これを剣や防具に加工すればその10倍以上で売れるんや。今回はコンテスト用の出品やしな」


 そしてテッカンは魔炎鋼竜の牙とクイーンマインの表皮と結晶を使い、鍛冶を開始した。

 

「コンテストまで猶予も無いし、ここから3日3晩ぶっ通しで剣を打つ事になる……ステラはすまんけどまた高速艇の手配お願いするわ」

「分かった。ルビィも頑張れよ」

「俺は?」

「身体測定と魔力検査も終わったし……うん。特になんもないから3日後にまた来てな!」

 

  ◇◆◇◆◇◆◇

 

 こうして俺は束の間の休息を得た。

 となれば真っ先にやる事がある。魔力補充だ。

 

『この間の戦いで得た魔力の殆どを攻撃に使用した為です』

 

 実はというと定期的にある方法で魔力補充を行っているのだ。

 

 その方法とは――、

 

「へい彼女、ちょっと俺の中に入ってかない!?」

 

 という方法ではない。

 

 俺は市場の干物売り場で魚を買い、薬屋でとあるモノを買う。

 ギルド宿舎裏手の路地で誰も来ないのを見計り、胸元を開けた。

 鎧の中に、皿の上にほぐした魚の干物と粉末の粉を添え待つ――効果はすぐに現れた。

 

「にゃー?」

「にゃん」

「にゃにゃー」

 

 猫がワラワラと集まって来て――一瞬で俺の鎧の中は猫で一杯になった。

 

「「「にゃーにゃー!」」」

「わはは、やっぱくすぐったいな!」

 

 以前猫からも魔力を取れる事が分かったので、こうして野良猫を集めて少しずつ魔力を集めているのだ。

 ちなみに使用したのはマタタビパウダーという猫を呼び寄せる魔法の粉である。

 

「「「にゃんにゃー!」」」

「ぎゃー!?」

 

 さらなる大群が押し寄せ、俺は猫に溺れた。


  ◇◆◇◆◇◆◇

 

「ふーエラい目にあった」

 

 昼過ぎには解放された。

 さすがに猫臭いので身体を綺麗に洗ってから、ギルドに顔を出した。

 

「いらっしゃいませー。あらヨーイチさん。お食事ですか?」

「いや依頼を見ていこうかなって」

「それでは奥の掲示板へどうぞー」

 

 俺には腹が減るという感覚が、無い。

 魔力が枯渇気味でもそれを感じるだけで、腹が減ったなーって感想にはならない。

 食べ物の味は分かるが、満腹感も覚えないので違和感がある。

 

「元の身体ってやっぱもう火葬されて灰になってるんだろうな」

 

 などと言いつつ、ギルド奥の掲示板へとやってきた。

 後ろの方では酒場の客達が盛り上がっているのが聞こえる。

 

「うーん」


 

【東の漁港でカツヲン大量発生の予兆あり 銅5級から参加可能】

【コーディア地下水道。夜の鐘から朝の鐘までスライムをカウントする簡単なお仕事です。初心者向け】

【郊外農園の開拓のお手伝いをお願いします】

【新薬の治験をしたいので被験者を募集。頭に角などが生えてもノークレームでお願い出来る方に限る 定員1名】

【街道沿いの水場に巨大スライムの目撃情報あり 迅速な討伐求む 定員2名】


 

「これにしよう」「これにするか」

 

 依頼の書かれた羊皮紙を同時に掴む俺と、黒髪ロングの女性。

 三角の魔法使いの帽子に、脇や胸元が若干開放的な黒と紫の民族衣装的な格好。さらに黒いニーソから覗かせる太もも――非常に、イイ!

 

「お前、この前の鎧の魔物か」

「……ちょっといいかな?」

「何よ。魔物でも冒険者になれるなんて都会は凄いわね」

「――ご飯とか奢るんでちょっとイイデスカ」

「あ、おねーさん。今日のおすすめランチと鶏肉の詰物とワイン、ジョッキで。勘定は全部あの人に」

 

 即テーブルに座り注文を始める女の子。良い性格だ。

 

「……あ、俺はエールでお願いします」


  ◇◆◇◆◇◆◇

 

「もぐもぐ……」

「で、あの。どこで俺の事知ったはわかんないけど、身体の事は内緒にして頂きたく……」

 

 この前のクイーンマイン戦の時は鍛冶師のみんなには一応黙っておいて欲しい旨を伝え――打ち上げは俺の奢りになった。

 とはいえ人の噂に戸は無意味とも言うし、忍者のヤスオさんには口止めする前にどっか言っちゃうし……この噂がこれ以上拡大するのを防ぎたい所ではある。

 

「ぱくばく……」

「あと一応こんな身体だけど、人間なので魔物呼ばわりも止めて欲しいなぁって」

「ごくごく――」

 

 マジでよく食うな。

 

「――ぷはぁ! はぁー、ここ数日獣狩って野宿してたから……内蔵に染み渡るわね」

「なかなかワイルドだな。女性1人だと危なくない?」

「アタシはエルフよ。今年で110歳、何も問題ないわ」

「確かに、少し耳が長いな……そんなもんだっけ?」

「それは雑血で……なんでもない」

「――うん?」

 

 なんかそんな話を前にも聞いたような。

 

「ふぅ――ご飯奢って貰ったし、さっきの件は分かったわ。じゃあね、ヨーイチ」


 名前名乗ったっけ?

 

「……もしかして、俺って有名人か」

 

 ちなみに依頼を持ってかれた事に気付いたのは、お勘定をしている時であった。


  ◇◆◇◆◇◆◇


 その日の夕方。

 

「あ、ヨーイチさん。ちょっといいです?」

「ラーナちゃん、どうしたの?」

 

 飯を食べながら迷い込んでいた野良猫に肉の端を上げていた所で、声を掛けられた。

 ラーナは16歳でこのギルドの受付嬢をやっている頑張り屋さんだ。

 

「昼頃に受注された依頼……どうやらフリー冒険者の方が間違って受けちゃったのがあって――近場なのに、まだ帰って来てないから心配になって……」

「どんな依頼?」

「街道近くの水場に巨大スライムの目撃情報が出たんです。その討伐の依頼なんですが……話によると最近、行方不明者も出てるからもしかしたらスライムのせいなんじゃないかって噂になってて」

「よし。俺が様子を見てくるよ」

「本当にすいません。あ、ジェイドさんもお願いしますね」

「げ、バレた」

 

 よく見たら俺の背後に隠れていたらしい。

 

「調査費などは出ますので、よろしくお願いします」


 と、にこやかに言われジェイドは首を立てに振るしかなかった。


  ◇◆◇◆◇◆◇

 

「ちゃちゃっと片付けて帰ろうぜ……大体新人のフリー冒険者の尻拭いとか気が乗らねぇ……」

「そういえばその依頼を受けたのって、凄いスタイルの良いエルフのお姉さんだったよ」

「何をしてるんだヨーイチ! すぐに助けに行こう!」

 

 という訳で、街道を少し北へ歩くこと1時間ほど。

 まだ辺りは明るいが、もうすぐ暗くなるので早めに探したい所だ。

 

「確か街道から少し外れた所に……ここか」

 

 林の中にちょっとした川と池、休憩所が建てられているが、【巨大スライム目撃情報あり。休憩所閉鎖中】の看板がドアノブに掛かっていた。

 

「巨大スライムって、どのくらいデカいんだろうな」

「そもそも天然のスライムって大きくても人間の頭くらいで洞窟やダンジョンみたいな所に生息してるからな……水辺にも居ない事は無いけど」

 

『センサーに反応あり、2時の方角――スライム5体を確認』

 

「ジェイド、来るぞ!」

 

 俺はゲートに右腕を突っ込み、鎧袖ナックルを取り出す。

 隣のジェイドも剣を構え、魔力を纏った。

 

「……スライムだな」

 

 茂みが出てきたのは、さっき言っていた標準的なサイズのスライムだ。

 緑や水色のぷるぷるしたゼリーみたいな見た目。半透明で中に丸い玉が3つ浮かんでいる。

 

『スライムのコアです。アレを2つ以上破壊すれば倒せます』

 

「うーん、普通のスライムか。もしかしてこいつらが合体してデカくなるとか?」

「それでもそこまで大きくはならないだろ、っと」

 

 話している間にもスライムはこちらに飛びかかって来ていた。

 

「天井の隙間とか木に隠れて奇襲してきて死ぬのが1番多い死因らしい」

 

 ジェイドは慣れた様子で攻撃を避けながら、剣でコアを斬っていく。

 

「ふーん。ていやっ」

 

 拳で殴ったらそのまま四散してしまった。

 なんか可哀想にも思えてくる。

 

「死骸は集めて瓶に詰めて売ったら、小遣いくらいにはなるぞ」

 

 そんな世間話をしている間に、スライム5匹は討伐完了していた。

 

「行方不明の冒険者はどこに行ったんだろうな」

 

 ジェイドがそう言いながら粘液まみれの剣を池で流そうとした瞬間――。

 

『緊急警報。魔力反応増大、7時の方向』

 

「そっちは――ジェイド!」

「うん?」

 

 ジェイドがこっちに振り向いたのと同時に、背後の池の水面が突如泡立ち――ジェイドへと襲いかかった。

 

「うわっ、なんだコイツ!」

 

 魔力を足に集中させ咄嗟に逃れるが、ジェイドの剣は池の中から出てきたモノに飲まれてしまった。

 

「――おいおい」

「デカ……」

 

 池から出てきたのは、言葉通りの巨大なスライムだった。

 周辺の森の木よりもスライムの全長はさらに大きい。

 

「また巨大生物かよ!」

「あっ、ヨーイチ! スライムの中に……」

「ん?」

 

 そう言われ左の親指と人差し指で丸を作り、魔力レンズを作り出す。

 

「なんか小さい女の子がいる……黒い衣装の……でもスライムに飲まれてるって事はもう――」

 

『まだ彼女の魔力は肉体から離れていません。心臓も動いているようです』

 

「よく分かんないけど、生きてるらしい!」

「そうか……で、どうしようか」

「そりゃ――こうやる!」

 

 鎧袖ナックルへ魔力を込める。今は土鎧のエレメントは無いが、それでもコレで殴ればその辺の魔物も粉砕できるくらいの威力だ。

 

「鎧袖、ナッコォォォ!」

 

 巨大スライムの頭部分へ飛び上がり、右腕をコアに向かって突き出した。

 しかし右腕はスライムの身体に深く突き刺さるだけで……それ以上は何も起こらなかった。

 

『警告。こちらの魔力を吸収されています』

 

「マジかよ!」

 

 しかし腕を引き抜こうと踏ん張ろうにもスライムの体表はヌルヌルしてるし、力を入れれば体内にめり込んで取り込まれてしまう。

 

「――」

 

 特に鳴き声も発しないが、スライムの肉体は徐々に俺の腕から鎧へと浸食していた。

 

「しょうがない!」

 

 左手でゲートを開き、中に腕ごと突っ込むと目的のアイテムを取り出す。手首には赤や青の宝石の付いたアクセサリーを付け、さらに魔法の呪符を握った。

 後は呪符に魔力を入れて簡単な呪文を唱えるだけでいい。後は手首のアクセサリーが火のエレメントに干渉してくれるらしい。

 俺は左腕もスライムの中に突っ込み、呪文を唱える。

 

「火よ、爆ぜろ! ファイアーボール!」

 

 スライムの体内で火球が生み出され、爆発を起こす。

 ボンっ――という音と共に、ゼリー状の身体の一部が爆散した。

 

「――!」

「助かったー」

 

 ひとまず俺自身は爆発のおかげで自由になれた。

 その辺りにゼリー状の肉片が飛び散っているが、スライム本人は特に気にせず元通りに修復した。

 

『先程のスライムの肉体を解析した結果です。あらゆる衝撃を分散して吸収し、取り込んだ生物から魔力を摂取するようです。あの肉体には外気と同じ成分が含まれており、肺をあの粘液で満たせば呼吸もできるようです』

 

「便利なスライムだな」

 

『自然的なモノである確率は限りなくゼロです』

 

「大丈夫かヨーイチ!」

「俺は大丈夫。左手も治ったし」

 

 少し焦げていた左手も修復できた。どうしたものかと考えていたが――。

 巨大スライムの体表からたくさんの触手が飛び出してきた。

 

「危ね!」

 

 俺達を取り込もうとしてる訳か。

 

(ニーア。奴の魔力吸収速度は早いのか!)

 

『それ程ではありません。毎秒10マナ程度です』

 

(……よく分からんけど、あんまり早くないのなら)

 

 俺は再び鎧袖ナックルに魔力を込める。

 次は回転を加えるドリルナックルだが、それでもコアに辿り着く前に魔力切れを起こすだろう。

 

「ジェイド! 女の子が飛び出したら、頼む!」

「分かった! まかせとけ!」

 

 少し後方へ飛び、助走を付ける。

 全力で走りながら右腕と、さらに全身にも回転する魔力を右回りに走らせる。

 

「超ドリルタックル!!」

 

 俺は全身をドリルのように回転させ、一直線にコアを狙う。

 

「――!!」

 

 スライムの触手を弾き飛ばし、一気にゼリー状の体内へと潜った。

 足から魔力を放出させどんどん掘り進め――1つ目のコアを破壊!

 

(もう1つ……ッ!?)

 

 スライムは器用にも自分の体内で左回転の渦を作り出し、俺にぶつけてきた。

 

(回転が……)

 

 コアの目の前まで来たが回転は止まり、さらに身動きが取れずどんどん魔力が吸われ――。

 

「炎よ、爆ぜろ。ファイアーボール」

 

 鎧の中にまでスライムは浸食されなかった為、呪文を唱えれた。

 俺は鎧の中に入れていた複数の呪符を起動した――。


 ボォンッ!!


 俺の鎧の内部で火球は爆発し、右腕はその勢いで吹っ飛び――コアに命中した。

 

「――!?」

 

 巨大スライムは一瞬膨張し、そして爆散したのだった――。


  ◇◆◇◆◇◆◇

 

「うーん」

 

 爆散するスライムから落ちた女の子はジェイドにしっかり助けられ、俺は辺りに散らばった粘液の中から右腕を回収した。後で洗おう。

 

「――ゲホッ、ゲホッ」

 

 見た目が10歳くらいの女の子は黒と紫を基調とする民族衣装を着ていた。三角帽子は脱げてしまい、その黒髪が露わに――。

 

「この子は、獣人か!?」

 

 頭に可愛らしい猫耳が付いていたのだ。

 しかしこの服装。どこかで見た事あるような。

 

「大丈夫か!?」

 

 咳き込む女の子の背中を擦りながら肺の中の粘液の排出を促す。

 

「ゲホッ……は゛い」

 

 まだちょっとキツそうだが、意識は取り戻したようだ。

 

「ありがどう。まさか池の中にスライムが居るとは……アタシも油断したよ」

 

 と、ここで俺らの視線が女の子の頭にある事に気付くと、慌てたように三角帽子を被る。

 

「あわわ――見た?」

「見た」

「君、獣人? エルフっぽい耳もあるみたいだけど」

「へ、変化のジツが解けかけてる――こほん。お主ら、ちょっとそこで話があるのじゃ」

 

 女の子に促されるまま俺達は休憩所へと入り、ひとまず焚き火を起こした。

 少し気まずそうな幼い顔が明かりに照らされる。

 

「えーっと、何から話せば良いか……」

「その前に。ここに君と似た服装の女の人来なかった? 巨大スライム討伐クエスト受けたらしいんだけど、行方不明でさ」

「……あぁ、そうそう。その人ならここへ来た後にどっかへ――」

「どう考えても君でしょ」

「そうなの!?」

「ギクッ」

「さっき変化とかどうとか言ってたし」

「ギクッ……しょうがない。ならば話すしかないな」

 

 女の子がポツリと、話し始めた。

 

「アタシはハナコ。ここより西のクーロン国よりやってきたニン者じゃ」

「――あぁ、ハナコってあの時」

 

 確か巨大なパンダを出してクイーンマインの攻撃から俺達を守ってくれた女忍者。

 

「でもギルドの時も顔が違ったような」

「一応抜けニンじゃからな。見つからぬよう、変化のジツで姿形を変えておったのじゃ――今はスライムに魔力吸われてるから元の姿じゃが」

「確かヤスオさんから聞いた話によると、忍者って元々エルフって聞いたけど」

「かつてエルフ達はニン者として生きる事を決めた時、伴侶を外の世界で見つける事にしたのじゃ」

 

 強い人間の戦士や冒険者、獣人やオークの伴侶を持ったエルフも居たという。

 

「強い遺伝子を持って最強のニン者として売り出す為じゃな――アタシの一族は獅子の獣人と交わったそうだ」

「……猫じゃないんだ」

「あん? ……そして稀に先祖の血が濃くなる子供が産まれる事がある。それがアタシ。この耳も一族の中ではお婆ちゃんかアタシくらいしか生えてないぞ」

「普段から見た目が変わってたのは耳を隠す為か?」

「そうだ。ニン者の里でもアタシは珍しい見た目をしているから変化のジツであの姿になっていた――この事は一族だけの秘密なのじゃ」

「……で、オレらはその秘密知っちゃったけど」

「本来なら記憶を喪失させるジツを使いたい所じゃが、魔力が足りないし――時間が経つと狙った記憶は消せないしな……という事で、この事は黙ってて下さい!」

 

 その場で土下座し、小さく丸くなるハナコ。耳も垂れ下がる。よく見たらお尻から尻尾も見えていた。

 

「まぁ女の子から頼まれちゃオレも断らない理由はないけど」

「そうだなー。でも俺、この子に公衆の面前で魔物呼ばわりされたしなー。フリー冒険者が勝手に依頼受けちゃったし、冒険者協会に通報しないとなー」

 

 少し意地悪をしてみる。

 ハナコはビクッとし、こちらを見上げた。

 

「あ、あの時はすまなかった……金が入ったら奢ってくれた飯代も返すから……だから通報は……」

 

 プルプルと震えながら涙目になる猫耳の女の子――可愛いが、もちろん俺はそこまで外道ではない。

 

「分かってるって。俺も真っ当な身体じゃないのは事実だしな」

 

と言いながら猫耳を撫でたり、背中を撫でたりする。

 

「にゃっ!?」

「うーむ、猫耳少女――イイな!」

「あ、ずりぃ。オレも撫でさせてくれよ」

「ア、アタシは猫じゃないのじゃ!!」


  ◇◆◇◆◇◆◇


「この度は、まことに申し訳ございませんでした」

 

 翌朝。

 俺らに連れられて、ハナコはギルドマスターの前で再び頭を下げた。

 

「まぁ無事だったんなら言う事は何もねぇ。今後、間違えるんじゃねぇぞ。ジェイド。俺は王都へ行くから、ステラにもそう言っといてくれ」

「分かったよ、伝えとく」


 

「怒られなくて良かったのじゃ……」

 

 下の酒場でお疲れ様会を開いた俺とハナコ。

 ハナコの今の見た目は15歳くらいである。大人の姿だと色々怒られそうなので――とジェイド発案。

 昨日の巨大スライム討伐の報酬とスライムの死体を売った金が割とまとまった金額になったので、それを3人で均等割りにする事になったのだ。

 ちなみにここはハナコの奢りになった。

 

「で、これからハナコはどうするの?」

「ひとまずはフリーでも受けれる仕事をしつつ、入れるギルド探すかなぁ」

 

 相変わらずここのギルドの新規登録は停止中だ。

 ハナコはサラダをムシャムシャ食べながらボヤいた。

 

「そういえば抜け忍って言ってたけど、やっぱり追っ手が来たりするの?」

「昔ならすぐに里に連絡がいって処刑部隊が来たりするけど。テーマパーク化する時に処刑部隊の人らも……里から出ちゃったのじゃ……」

「世知辛い……」

「あのバカ委員長が追っ手を差し向ける可能性も無くは無いけど。まぁバカだからそんな頭は無い無い」

「ふーん……ハナコさ。俺とパーティ組まないか?」

「ぱーひー?」

 

 焼き魚を頬張りながら聞き返してくる。

 

「パーティ組めばフリー冒険者も正規のメンバーと同じ依頼に参加できるし、何よりお互いに秘密知ってる仲だし……色々気楽に出来そうだと思うんだ」

「アタシとしては断る理由もないけど……ホントにいいの?」

「ハナコの忍術が凄いの知ってるし、俺も最近結構実力不足を痛感しててさ」

 

 結局は俺自身はそこまで強い訳じゃない。

 俺を着てくれる人が居ないと、本領を発揮できないのだ。

 その辺の雑魚魔物なら問題ないけど……今後を考えたら事情を知って一緒に戦ってくれる人は多い方が良いはずだ。

 

「アタシのニンジツ、凄かった?」

「そりゃもう」

「――ふふーん。そうかそうかアタシのニンジツが凄かったのじゃな! ならば仕方が無い、アタシの力を貸してくれようぞ!」

 


 こうしてハナコと一緒のパーティを組む事となった。


 決してたまに耳とか撫でたいからではない。


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