第3話ー2.5 テッカンと借金
「いやぁテッカン殿のコンテストに出される品は、毎年どれも素晴らしい出来ですな」
「もう4年連続で優勝されてます。それまで優勝の常連だったガッチン殿も悪くは無いのですが……」
(ふふん、そうじゃろそうじゃろ)
王宮内にたまたま用事があって来ていたテッカンは、貴族達が自分の噂をしているのを耳にして、柱に隠れていた。
「でも噂では、ガッチン殿はあのスフィール商会と専属契約を行ったとか」
「勇者候補生であるヴィータ嬢の!」
「なんでも次の武器コンテストの為の特別な素材を、わざわざ大陸外から取り寄せるとか」
「それは楽しみですなぁ」
(な、なんじゃと!?)
普段仕事で使う素材は全て王宮持ちで商人に手配して貰っていた。
しかしコンテストに使う素材は自力で用意しなければならない。もちろん優勝すればその分の代金は賞金とは別で回収できる――優勝することを見越して、テッカンは毎回最高の素材を仕入れていたのだ。
「もちろん素材の優劣だけで武器の良し悪しが決まる訳じゃない――ないが……」
コンテストに5年連続優勝すれば王様と当代勇者が使う剣を打つ事が出来る権利を手に入れることが出来る。
それ故に悩み――そして商人に相談した。
「なるほどぉ。では、まずは相手の仕入れた素材が何かを調べる所から始めましょうか。いえいえテッカン殿にはいつも儲けさせて頂いてますので、調査等の費用は全てこちらで持ちましょう」
それから数日後、商人からの急ぎの報告があった。
「テッカン殿! 分かりました、魔炎鋼竜です! あの伝説の八竜の!」
「ま、魔炎鋼竜……じゃと」
「隣国の火山島の国で暴れていたのを勇者候補生のスフィール嬢率いる部隊が討伐したとかで……」
「そ、そんな伝説級の素材を……ガッチンの奴が扱えるのか? ……儂なら、儂なら出来るはずじゃ!」
「それで実は今晩、王都のオークションでその牙と鱗が出品されるようです」
「なんと!」
「コンテストの規定では市場価格の決まっていない素材は使えませんからねぇ――ヴィータ商会が出品したんでしょうな。前代未聞故にどんな値段になるか分かりませんが」
「欲しい――ぜったい欲しい!」
「そうおっしゃると思いました――申し訳ありませんがここからは商売の話になります」
商人が出してきたのは契約書だ。
儂が商人に金貨2000枚を借り、それを儂の武器などで売った金で返済していくごく普通のモノだったが、
「これは有名な金貸し商会の名前と、担保とな」
「今回は色んな大手商会が魔炎鋼竜の素材を狙ってきます。そうなるとワタシの手元のお金だけでは足りない可能性が高いです。そこで、テッカン殿には追加で借りて頂きたいのです。もちろん金貸しの所へはワタシが直接出向きます」
「ふむ……致し方がないのぉ」
「ただ金利などはワタシが払いますし、使わなければそのまま金貸しには返して置きますので」
これまでの商人との信頼関係もあるし、儂は二つ返事で契約書にサインをしてしまった。
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