第3話

「え?お金持ってないのかい?」


「この世界の通貨は持ってないかな」


「もしかしなくても一人だよね?」


「ボッチ、いえーい!」


「…。永遠のボッチ門番である僕にも刺さるからやめて欲しいな…」


「あ、ごめんなさい」


そうだった、人々にとってボッチってそれなりに辛いことなんだった。

忘れてた。


人族は集合するからこその強さがあるからね。


「女の子を一人で門の外に放置するのも宜しく無いし…。規律を守らないといけないし…。迷う…」


入れてくれるか入れてくれないか迷っているらしい。

まあ、私としては入れてくれなくてもいいんだけどね。


というか、上司とかに普通連絡するもんじゃないの?


「よし、決めた。通っていいよ。その代わり身分証を作ってきて欲しいな」


「ありがとうございます!」


「どういたしまして、ようこそ!ガバセキの街へ!」


街に入る前に、門で気配を探る。

…誰もいない。


本当にボッチだったんだあの人。

セキュリティガバガバだなぁ…。

治安ダイジョブ?


あ、そういえば名前聞くの忘れた。


まあいいか。




街に入ると、人通りは思っていたよりも多かった。

10〜20人ぐらいは歩いている。


治安はそこまで悪くなさそう。

時折、ガラの悪い人が通るけど、お婆さんを助けてた。


あれ?治安結構良い?


母親らしき人と、その子供が二人きりで歩いていることからも、中々に治安が悪すぎないことを物語っている。


あ、子供が母親が買ったパンを摘み食いしようとしてる…、と思ったら母親に止められた。


「つまみ食いするような悪い子は魔女が森からやってきて連れ去られてしまうよ?」


うーん。典型的なちっちゃい子供を叱る言葉。


それにしても、魔女…ね。



暫く歩いていると、人が多く出入りしている場所を見つけた。

なんだろうと看板を読もうとしたが…。


「読めない…」


まあ、縛りをつけたせいで文字も分からないわけで。


仕方がない。聞くかぁ。


ちょうど近くを通りかかった、すごく筋肉質な女の人に声を掛けてみる。


「あの、すみません、ここって何ですか?」


「え?アタシ?」


「そうですよ〜」


「ここは”冒険者協会”。有名だと思うけど…。知らないの?って、ここでは見ない顔だね。”冒険者協会”がない所から来たのかい?」


「無かったです」


まあ、似たような組織なら他の世界で見たことあるけど。


「そう。じゃあ、アタシが案内するよ。一緒に中に入ろう」


”冒険者協会”の中に入ると、老若男女様々な人が数人ほどいて、それぞれがそれぞれ、談笑をしたり、飲食スペースで酒を昼から飲んでいたり、掲示板みたいなやつとにらめっこしていたりと、色々なことをしていた。


女の人―――名前はジュリアさんというらしい―――といっしょに中に入った瞬間、空気が凍った気がした。


何で?


その質問を答えるかのようにさっきまで談笑をしていた人が口を開く。


「あ、あの”無双の武帝”と呼ばれたジュリアが年端もいかない子供を連れているッ!事案だ!」

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