いなくならないで

「お父さんは事故で死んじゃってて、お母さんはその時の事故から寝たきりになっちゃってて。意識ははっきりするようになったんだけど、なぜか、私やお父さんのことを忘れちゃったみたいで……」

「そんな……」

「私に関わると、みんなに悲劇が起きるらしくて、よく疫病神って親戚に言われてたっけな」

「ひどい……」

 桜良は同情してくれた。それで十分だった。

「わたしが、私があなたの半身になります!私が逢花の側にずっといます!だからもう、自分を疫病神だなんて言わないで!」

すごく強い力で抱きしめられた。私をもう絶対離さないっていう気迫がこもっているようだった。

拘束する腕から抜け出そうともがくけど、桜良は腕をほどかない。結局、抵抗するのをやめた。桜良のこの言葉を聞いたから。

「いなくならないで、ずっと側にいさせて……逢花」


「とりあえず、家の中に入ろう」

そう言うと、腕の拘束を解いてくれた。


 家に招き入れて、2階の寝室に桜良を通す。

「とりあえず、好きなところに座って」

「ありがとう。ごめん、おしかけたみたいになって」

「別にいいよ。私しかいないわけだし」

桜良は私のベッドに座った。

私は床に座った。


「ねぇ桜良、桜良のこと、教えて欲しいな」

私は口火を切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る