「帰ってきてくれてありがとう」

「あの、じゃあもしよかったら私、お家について行ってもいいですか?」

「へっ?」情けない声を出してしまった。なんで?

「ちゃんとお家に入るまで側にいさせてください」

桜良を再び見ると、さっきの優しそうな目から変わって、すごく力強い目をしていた。私を絶対に一人にさせないって、訴えかけてくる。

やっぱりまだ信用、されてない。

「いいよ」

 正直家にまで来られるのは困るけど、仕方なくうなずいた。2人で並んできた道を歩く。

「あの、今日私と会ったこと、私が何をしようとしたか誰にも言わないで貰ってもいい?」


「わかりました。約束します。誰にも言いません」


それから他愛のない話をぽつぽつとしながら歩いていると、私の家に着いた
。

「着いたよ。ここが私の家。じゃあ私はこ……」

あれ…急に眠気が、気づいたら私は地面に倒れていて、そのまま意識が遠のいてしまった。

最後に見たのは、慌てて私を抱き起こそうとする桜良の顔だった。


 ※ ※ ※

 

「あれ、ここは……」

 目が覚めると、私は病院のベッドにいた。体はひどく重いもので、頭ががんがんとした痛みに襲われる。そういえば昨日一睡もしなかったっけ。起き上がろうとすると、何かが自分の上に覆い被さっていることに気がついた。

「……桜良?」

 呼ぶと、桜良はゆっくりと起き上がり、私の目を見た。そして、どうしようもなくうれしそうに唇を噛み締めて、奏を抱きしめた。

 しばらくされるがままにしていると、桜良は私の顔をじっと見た。そして、言う。

「帰ってきてくれて、ありがとう」と。


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