心は気まぐれ可変するもの

 誰かを救おうとか、誰かを感動させようなんて考えで曲作りをしているわけじゃなかった。ただただその時の気分と感情で一心不乱にさーっと作っちゃうだけで。意図していないことだったとして、とはいえそう感じてくれる人がいるってやっぱり嬉しいな。


 SNSに曲を出せば、それなりの人が聴いてくれてそれなりの数の反応をくれるのは知っているけど、あえて見ないようにしてきた。だから、今日はじめて誰かに評価してもらえたのかな。


 帰ったら、見てみようか。みんなの意見を。……ってあれ……?

 

「もう、死にたくは、ない……?」

その言葉を聞いてこの子は嬉しそうに笑みを浮かべてこちらを覗きこんでくる。


「もしかしてあなたが……」

「うん、私がそうだよ。私の曲を好きになってくれてありがとう」

「わたし、わたしはっ」

「ん?」

「あいかさんに会えて嬉しいです!こんなかわいい子だったなんて」

「かわ、かわいくはないよ」びっくりした。言われ慣れていないから恥ずかしい。

「あいかさんを助けられたのなら、私、一生誇れますね!」

「うん。ありがとう。しばらく頑張ってみるよ」

「よかったです!」

「私のことは、逢花あいかって呼んでいいよ。年近そうだし」

「分かりました」まだ固いんだよね。

「それにタメ口でいいよ。」

「分かった。逢花。私のことは桜良さくらって呼んでください。私の名前、雪乃桜良って言いますから」

「うん、よろしく、桜良」やっぱり固い。


私たちはハグをした。なぜかはわからないけど、ハグをしたくなったから。


やっぱり私たちは同い年だった。

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