38:青春の始まり
青春とはなんぞやと問われたら。その時あなたは何と答える? 部活? 恋? 勉強? うんうん、全て正解だ。ではいつ始まるかと追加で問われたら。あなたはきっと悩む事だろう。私がこの後話す物語はある高校生の等身大の一コマだ。誰かが病気になる事もないし、転校生が来る事もない。そんな平凡な学校生活を覗いてみよう。
◽︎◽︎ある少女の話◽︎◽︎
私の通う高校の部活動は自由参加だ。入りたい人は入ればいいし、バイトや勉強に専念したい人は入らなくてもいい。私は中学の頃から読書と映画を観るのが大好きで脚本に憧れを持った。なので入学当初から演劇部に入部できる日を楽しみにしていた。
五月。ある程度友達と呼べる知り合いもでき、部活動ごとに振り分けられた教室に移動する。
---演劇部は体育館か……私のいる教室は一年一組だから歩くのが面倒かも。
そんな事を考えていると上級生が教室に入って来るやいなや、チョークで黒板に『野球部』と記入した。そうか、この教室は野球部が集まるのか。私は邪魔してはいけないと速やかに教室を後にした。
お目当てだった演劇部の先輩達とも仲良くなり本格的に学校生活がスタートした。女性のみの構成で、男性が苦手な私には嬉しかった。
「部長、私今月の二十日誕生日なんです」
「本当? じゃあ、何かプレゼント用意しなきゃね」
「そんな催促したみたいで申し訳ないです」
ある日の部活終わりに雑談で何がきっかけかは忘れたが誕生日の話題になった。ただ『おめでとう』の一言をもらえればそれでいい。これは間違いなく本心と言える。
誕生日当日。部長を始めとした部員全員から祝ってもらい高校生活最高の誕生日になった。その日の放課後。部活のメンバーと部長の友達である男性の先輩とも帰る事になり緊張でいっぱいだった。しかしそれは杞憂に終わり、先輩は私に四つ葉のクローバーの形をしたキーホルダーを差し出した。
「今日誕生日でしょ? これあげる」
「え……いいんですか?」
「当たり前じゃん。受け取ってよ」
「ありがとうございます……」
男性と話したのは家族と親戚を除けば初めてに近い。声は絶対震えてたに違いないが異性からのプレゼントに心臓が高なった。
夜。お礼をまともにできないと気づいた私は例の先輩に電話をすることにした。事前にスケジュールを確認していおいて正解だった。
「もしもし。今電話大丈夫ですか?」
《うん、大丈夫だよ》
「あの、今日プレゼントありがとうございました。とっても嬉しかったです」
《よかった。表情が硬かったから微妙だったのかと思った》
「そんな事ないです! 私男性と上手く話せなくて……でも家族以外の男性から初めてプレゼント貰ったんです。本当です」
《大丈夫、疑ってないよ》
「……あの、先輩って好きな人いるんですか?」
《どうしたの、急に》
「困るのはわかるんですけど言いますね。私今電話してる人が好きなんです」
《え……》
「おやすみなさい!」
◽︎◽︎◽︎
青春の始まりというのは単純なのかもしれない。翌日改めて先輩から付き合おうと言われる事になるのだがそれは別のお話。
ちなみに作者の実体験である。
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