24:三択クイズ


 三択クイズ



 僕の隣の席の城下しろしたかれんは、少々変わった人だ。

 成績優秀で可愛いから、僕の中学の中では人気者。

 なのに成績も運動も身長も平均値の僕に、ちょっかいを出してくる。

 僕は、そんな城下さんが好きだった。


『三択クイズ』


 授業中、隣から飛んで来たノートの切れ端の文言だ。

 その下に続くのは、もちろん三択クイズ。

 城下はたびたびこんなちょっかいをかけてくるのだ。

 今日の問題は──


『第2問 来週、この街では何があるでしょうか

 ① まぐろ祭り

 ② 提灯祭り

 ③ 八千代橋の近くの水神祭り

 さあ、どーれだ』


 なんだこのクイズ。

 今までの三択クイズは、地理や歴史の問題が多かった。

 こんな簡単なクイズ、初めてだ。

 この街に住む人なら、誰でもわかる問題だ。

 僕はノートの端っこを切ってペンを走らせる。


『③』


 切れ端を城下さんに返すと、ニヤニヤして僕を見る。

 頭の中がハテナが浮かぶ。

 そんな僕の考えなんか知らない城下さんは、また僕にノートの切れ端を投げてきた。


『正解! では第2問

 次のうち、私の好きな食べ物はどれでしょう。

 ① かき氷

 ② りんご飴

 ③ たこ焼き

 さあ、どーれだ』


 ──意味がわからない。

 どうしてこんなお祭りの定番みたいな三択なのか。

 もしかしたら、城下さんは僕に気があるのかな。

 いや、そんなはずはない。

 同じクラスになったのは中学三年になってからだし、出身小学校だって違う。

 城下さんと僕の共通点は、何もない、はず。

 大量のハテナが頭の中をぐるぐる回る。

 ちらっと城下さんを見ると、ニヤニヤしている。

 あの顔は、答えを待っている顔だ。

 答えなければならない。

 んーどれだ。


『③、かな』


 答えを投げ返すと、すぐに城下さんからノートの切れ端が飛んでくる。


『第3問 私の浴衣姿、見たい?

 ① 見たい

 ② すごく見たい

 ③ 見たいに決まってる

 ど〜れだ』


 ……え。

 どういう状況?

 もうこれ、クイズじゃないじゃん。

 というか「見たい」以外に選択肢ないじゃん。

 てか第2問の答え合わせは?

 城下さんを見ると、俯いてチラチラと僕を見ている。

 ……可愛い。できることなら。


『③』


 勇気を出して、答えを城下さんへ渡す。

 答えを見た城下さんは、真っ赤な顔でノートの切れ端に何か書いている。

 そして、僕の机にノートの切れ端が落ちた。


『ラスト問題 私を水神祭りに

 ① 誘う

 ② 誘わない

 ③ もう一緒に行く相手は決まっている

 ……どれ?』


 切れ端を見た僕は、心臓が速くなった。

 顔が熱い。

 どうしよう。どうしたらいい。

 迷った僕は。


『④』


 と書いて城下さんに投げる。

 城下さんは、キョトンとして僕を見た。

 僕はすぐに、もう一度ノートの切れ端に急いで書く。


『④ 僕でよかったら、一緒に水神さんに行ってください』


 切れ端を見た城下さんは僕に笑みを向けて、すぐにノートを切って書き始めた。


『誘ってくれてありがとう。第2問の答えは、お祭りでね』


 僕は思わず叫びそうになった。

 どうしようもない気持ちが、溢れて溢れて。

 夢を見ているような感じになって。


 先生に怒られるまで、僕はニヤニヤしていた。

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