第24話 虚勢
彼女はゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
陽光に照らされたその髪は外側に軽くカールがかかっていて、
風が吹くたびにそのカールが優雅に揺れ動く。
頬がほんのりとピンク色に染まっている。
彼女が俺を発見したのかこちらを見て一歩一歩近づいてくる。
男子グループ、デート中の男でさえ彼女には釘付けだ。
彼女はこういうときでも任務を忘れない。
頼れるやつだ。
彼女は俺の隣に知らない奴がいることに気づいたのか、
第一声は修也君に向かっての優しい挨拶だった。
昨日はあの後、すぐに早退したからか、ずいぶんと顔色は良さそうに見えた。
いつもより化粧をしているからかもしれない。
次に俺の目をみて軽く挨拶をする。その眼には
どういう状況なにかを訴えているように感じ取れた。
この状況をなにかのハプニングかと勘違いしているのだろうか。
俺は彼女に修也君の状況を端的に伝えた。
後輩君か!!よろしくね!結花お姉さんだよ!
彼女はわざとらしく先輩風をふかす。
こちらの方が彼の緊張をほぐせると思ったのだろうか。
それにしても、どうして何も言わなかったのかな?ねぇ、天ケ瀬君?
彼女はそういって連絡を怠った俺を軽く指摘する
笑顔が怖いよ
まったく、聞いてよ、天ケ瀬君ってば昨日、私の目をみて
「明日一緒にでかけないか?」って真剣に言ったの!
私てっきり、傷ついた私のためにエスコートしてくれるのかと思ったのに~~
そういって後輩に俺の愚痴をこぼす。
先輩、それはまずいっすよ。
女性をエスコートするのが男の使命っす。
それだけではない気がするがそのマインドは組織に向いていて頼もしい。
俺の取った行動が意外だったのか、後輩が軽く引いている。
まあ彼は俺を尊敬してくれているらしいからな。
たしかに扱いがなっていなかったか。
この場では悪者になっておいた方がいいだろうな
言い訳しない言い訳しない
よし、じゃあ今日もがんばろっか!!
水無月は初実践の後輩を鼓舞する。入園口に向かって歩き出した。
ちょっと、まった
俺は彼女の腕をつかんだ。
不機嫌そうに口に空気を入れてムっとした顔を作る。いい顔だ。
実はちょっとこいつ楽しみにしてるんじゃないか?
「あと一人来るんだよ」
今日の実践は二人、たしかもう一人は今回で実践は3回目だったかな。
実践は現在のシステム上最低3回行われるらしい。
各実戦において指導する経験者が合格ラインを設定し、それを修也君たちは
超える必要がある。
2回までの失敗が許され、それ以降は最初から教育課程をやり直すか、
この組織から消えるの2択だ。
こんにちは
指揮官に言われた内容を頭で復唱していると
女性の声が聞こえた。
おそらくもう一人の主役だ。
俺たちはその声の主を振り返って確認した。
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