第22話 セロトニン

ちょっと  もういいから


俺の腕の中にいる水無月は抵抗の意として俺の胸あたりを押して抗うが

そこに力は入っていなかった。


後ろを振り返って、水無月のメンターが追って来ないことを確認する。

もう大丈夫みたいだ。

保健室には向かわず2階に上がる階段を通り過ぎたあたりで水無月をおろす。

酔っ払いは視覚や中枢神経系が正常時より機能しない。

そのため膝を曲げ、本当に彼女がお姫様であるように丁寧に扱った。

水無月が走った時についた砂埃を落とす際にまた水無月の香りが漂う。


ありがとぉ


少し照れ臭そうに少女はそういって頬を搔きながら

目線を斜め下にそらして感謝する


強引に連れ出したため、ひどい説教がまた始まるのだと覚悟していたのだが、

予想外だった。

また彼女の照れながらの感謝が俺には新鮮に映ったのだ。

これまでの数か月、彼女は感情を表現するのが得意であるというレッテルを俺は

張っている。それは子供のように感情をさらけ出すこととは異なる。

もちろんコントロールできるし、感謝はコミュニケーションにおいて非常に重要な要素だ。だから彼女は相手の目をみてはっきり「ありがとう」とよく言っているのである。それが今回の照れの布石であり、心が揺さぶられる。

これが彼女の計算内であるなら本当にブルースターに向いているだろう。


てめぇ、まだ0.2しかねえじゃねえかーーー

俺は自分の携帯から先ほどのレコーディングを流し、彼女の意志を見る。


彼女があの状況を受け入れているには意味があると思った、

であるならば従うのがベストだ。

彼女は俺の行動をねぎらいながらも申し訳なさそうにつぶやく。


消してほしい。


作戦なのか、私情が関係しているのだろう。

ただし、このままでは水無月のメンタルが持たなくなってしまう恐れがある。


俺は目の前にいる彼女を同僚ではなく一人のターゲットとして落ち込んだ人を

どう助けて上げたらいいかを過去の大量の経験から判断する。


明日空いてる?行きたいところがあるんだ

俺ができることそれは、彼女がこれを自分で解決するために

全力で彼女の心のケアをすることだ。


この超恋愛オタクを最高に楽しませるデートを決行する。

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