第21話 二等辺三角形
「結花 久しぶり、先生もこんにちは」
角を曲がったら、ばったり、そんな感じで俺は2人の視界に入った。
水無月は予期していない人物の登場に驚きはしたが、
眼圧で去れというメッセージを飛ばす。
挨拶は返してはくれないようだった。
男はこの状況で声をかけられるのが非常に不愉快だっただが、
職員としての立場でもあったのでいやいやながらも挨拶は返した。
そんな男に優しく目を合わせる。向こうに警戒心があると思われてはいけない。
「結花、大丈夫?熱でもあるのか?」
彼女の火照った顔からそう読み取ったように彼女の状態の方へ話題を誘導する。
「これだと今日の授業は難しいんじゃないか、生徒のことを思っての
メンター制度なのに生徒が体調崩したらどうしようもないぞ」
「えーとね、水無月さんは疲れただけなんだよ
教育方針上、生徒が超えられるぎりぎりの限界の課題を出すのが
私の仕事だからね。ほら、もうすぐ休憩時間が過ぎる。」
適当なでたらめを男は続ける。
どうしてもこの場を去ってほしいようだ。
手は固く握られ力がこもっている。
体格上、有利なのは俺だ。しかし問題がある。
酔っ払いを抱えながらの戦闘には自信がないし、
教師に手を挙げたとなれば俺たちの立場が悪くなる。
ショルダーバッグに他に何が入っているかも分からない。
はやめに切り上げるか。
少し強引に顔を彼女の顔にぐっと近づけ、前髪を挙げておでこをくっつける。
熱の確認をしているぞっていうアピールだ。
彼女の暖かい肌の温度が俺の額から前進へ少しずつ伝わる。
少し早まった脈と乱れた呼吸は艶やかさを感じさせる。
やはり高校生には見えないな、これは...
体温は普通の酒飲みくらいの体温であるだろうが、
今俺たちは高校生だ、この温度は充分、熱である。
「結構熱いな、保健室行くぞ。」
彼女はまたしても首を振る。
強情だったが彼女のメンタルはひどく疲弊していた。
彼女が断る理由が分からなかったし、分かりたくもない。
考える時間はないと判断して、強引にためらうことなく彼女を抱き上げた。
彼女は驚いた顔を見せたが、腕の力強さに逆らう余地はなかった。
手はしっかりと彼女の腰を支え、もう片方の手は彼女の膝の裏をしっかりと掴む。
「すみません、失礼します。
やはり心配ですので。」
久しぶりのお姫様抱っこがこんなロマンスのない形で実行されることとなった。
なれない態勢である分、彼女にできるだけ揺れを与えないように上半身はできるだけ上下しないように校舎の方へ向かう。
相手の反応を聞いている余裕はない。
少しでも早く水無月とあいつを離さなければ...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます