第20話 マインドブロック

学校に戻った後、

帰るふりをして午後から登校してくるクラスメイトと道端での遭遇を装い、

水無月のことを聞いて回った。


「最近さ、結花どう?元気そう?」


A:「普通に元気じゃない?なんだよ、水無月に愛そう着かされたのか?」


B:「そんなに変わったことないと思うよ、まああんまりかかわってないけど」


C:「そんなの自分で聞きなよ、なさけないな...」


水無月の通り道を避けて、数名に話を聞いたが水無月の様子は変わって

いないらしい。ではどうして泣いていたのだろう。柊の勘違いか、

水無月の作戦であれば良いのだが...


校舎に戻って階段を上り、屋上に出る。

屋上のフェンス越しに向かいのB棟を双眼鏡で確認する。

最近はどうも熱い、梅雨のせいか、気温の上下が激しく体がついていかない。

しばらくして水無月が廊下から歩いて来るのを確認する。

時間は午後の開始時間ギリギリなのが気になる。

俺は確認が取れた後、B棟に移動して彼女と奴のメンターが移動するのを待った。


水無月と、おそらくメンターらしき人間が3組の教室を出る。

メンターの見た目は40代、手前と見える。肉があまりないせいか

顔の線が良く見えた。

身長は170 cm付近であったがひどい猫背で彼の重心は自然と後ろに引かれていた。体が前に傾くたびに、無意識のうちにバランスを取るために足を踏ん張っている様子もある。そんな人物の後ろにいる水無月は肩を小さくしてついていく。

彼女の覇気はない。おいおい、何処がいつも通りだよ

間違いなくあの人間が原因で水無月は苦しんでいる。

あいつは何を専攻したのだろうか…


2人が行きついた先は校舎の裏門だ。

サッカーゴールを超えた先には余り身を潜められ場所がないことから

俺は正門から回り込み二人が経つ場所のすぐ隣の角で耳を澄ませる。


おい、宿題はやってきたんだろうな...


しばらく音が聞こえなかったので俺はカーブミラー越しに水無月とメンターの様子が見える位置まで移動した。


男は掛けていた小さなショルダーバッグを前にして一番大きなポケットから

長方形型の測定器を取り出し、彼女に差し出す。

彼女はそれを口元まで持っていき、息を吹きかける。


その装置からはピーピーと音が鳴る。


アルコール濃度計だ。


その音が鳴った瞬間、やつの表情が変わる。



てめぇ、まだ0.2しかねえじゃねえか

目標の半分も行ってねえぞ

どうして先生の言うことが聞けねえんだ、


そんな罵倒をただただ浴びせていた。

彼女をののしる男の口元はゆるみ、口角が上がっていた。

最低なごみくずだ。



持っていた録音機がちゃんとレコーディングをしていることを確認して、

俺は二人の前に顔を出す。


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