第15話 肉肉しい回廊
「伊夢那くん、彼は本来この任務に就くはずじゃなかったの」
翔太が去って心のかさぶたがあふれ出た感情をせき止めたのを
見計らって水無月は後ろから声をかけた。
「本当は本郷さんって人がに担当するはずだったの」
非リア充撲滅委員会の人間は大抵の場合、指揮官補佐から
任務の詳細を手に入れる。単独で行うことが多いことから、チームの時でも
連携の義務はなく、連絡先から自発的にコンタクトを取るものとなっている。
この任務は組織の中で重大であることから絶対に失敗はできないと考えた結果、
任務配属決定後、すぐに俺は連絡を取った。
そこで水無月のことを知ることができた。
であるからして結局、入学数か月後、翔太がこの学校に来たことから
翔太の気まぐれで連絡をしなかったのだと思っていた。
しかしどうやら違うらしい。彼女は本郷と連絡を取っていたのだ。
電子媒体でのやり取りの内容を教えてくれた。
年齢は俺より1つ上の21歳で、証明はできないが、
基礎学力、運動能力はどちらもA-、コミュニケーション能力はA
状況能力はA+など組織のなかでもかなり高水準で価値がある人材である。
確かにこの任務に配属される理由が十分だ。
もしかしたら名前を変えているだけで俺はその人のことをしっているのかも
しれない。基本的に非リア充撲滅委員会に入る前、教育課程、実務では
大体名前が異なる。
当然水無月も本名ではないと思う。
本郷についての詳細を得たところで当然わいてくるのは次の疑問だ。
どうして本郷は俺に連絡を返してこなかったのか?
考えられるのは2つだ。
まず、この任務を単独で行おうとしている可能性がある。
水無月との会話から、チームワークより個人での
活動出の方が成果が挙げられるということ。
こちらの方が評価は自ずと高くなる。競争心が強く、何かしらの形で
俺の成績を超えたいのならば当然この決断をとるだろう。
1年生のふりをする必要はなく、2,3年生のふりをして転校してくる。
もしくは先生に、職員になりすますこともできなくはない。
「こうなってしまった以上、一人でも多くの人間が必要だ。
校長に本郷のことを確認しよう。」
校長は俺たちのことを学校で唯一知る人間だ。
彼は基本、監視が主な仕事であるが、この任務の情報には
上層部と肩を並べるくらいには詳しい。きっと手を貸してくれる。
しかしそれをすることはできなかった。
水無月がこの提案に首を振る。彼女は学校配布端末を俺に見せた。
学校のポータルサイトのページには校長の解任を伝える
メッセージが2分前に来ていた。
非常にタイムリーだ。あの団体が動き始めた可能性が高い。
こうなってしまっては情報を手に入れるには難しくなってしまった。
上層部に情報を開示するためには時間がかかるのだ。
この校長解任の件も含め、やはり本郷もあの団体にすでに消されたという
2つ目の可能性の方が連絡を返さなかった理由として有力となってきた。
そう考えて行動したほうがよいだろう。
完全に後手に回ってしまった俺たちは行動しなければならない。
翔太の思惑を阻止するため、
奴らの目論見を予想し、防ぎ、つぶす。
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