第14話 刻まれた石ころたち

仮面を取った少女の正体は翔太だった。

正確には仮面の下に隠されていたのは素顔ではなく

翔太が以前3組に顔を出したときのに変装した女だった。

あの顔をもつ生徒は、少なくとも今年度で燦燦高校には在籍していない。

翌日の放課後、水無月をつれて翔太をB棟2階、理科準備室に呼び出した。


現時点であの団体が動いた痕跡は見られない。

しかし不安の種はつぶしておくべきだ。

この翔太との会話次第では

指揮官、校長に緊急として状況を報告する必要が出てくる。

翔太の身勝手な行動が脳裏に徐々によみがえる。あいつのせいで俺たちは...


教室前につくと扉が少し空いているのが分かった。

ヒーロー気取りの遅刻魔は本当に悪役になってしまったのかも知れないな。


よっ と翔太は相変わらずの態度で俺たちに振舞う。

薬品管理のためか空調調節としてエアコンのひんやりとした風が足元に触れる。

水無月が明かりをつけてくれた。


翔太、昨日お前何してた


俺の視線を受け止め翔太は落ち着いた調子で、また圧をかけるように


「みてたのか」と引き下がるなら今のうちだと言うように俺と水無月に視線を送る。


あの団体はそこまで恐怖じゃない、翔太が率いることがなければだ。

こいつは確実に何かを企んでいる。そして絶対に何かを起こす。そういう男だ。

だから止めなければならない。

放置してはいけない。


あの女子生徒、お前なんだろ


問うた後、いつもはぐらかす翔太はただうなずいた。

やつの視線の方を見るとそこには昨日のピエロの服が見える。


お前、なんでこんなしょうもないことするんだよ、

目、覚ませって

師匠に対してはずかしくねぇのかよ


俺たちを育ててくれた師匠の顔に泥を塗ったショウタを俺は許せなかった。


みんなでいい世の中にするって約束したじゃんかよ


しまわれた記憶の棚から辛かった日々、乗り越えた喜び、

師匠の教えが鮮明に頭に投影される。

ガキだった頃みたいに感情をただただ言葉を通して俺は出していた。


先生はもういないだろ...いつまでガキでいるんだよ

現実を見なきゃいけないのはお前の方だ。


翔太はそんな思い出には浸らず、ただただ事実を突き付ける。

そこにはタネなんてなく重い現実が目の前にあるだけだった。


俺は俺のやり方でやる、邪魔すんな。


翔太は俺と水無月の隣をすっと通り過ぎてそのまま理科室を後にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る