第11話 ハビット
宮田がコンピュータについて詳しいことを使わない手はなかった。
俺は使える情報は何でも使う。それだけ情報は価値があるものだ。
例えば、人は複数回、目にしたり、聞いたりすることをより好む傾向がある。
もちろん今伝えた傾向ですらこれを知らない人に貴重な情報となっただろうし、
これを意図的に使えば相手と仲良くなることも容易い。そのためにも情報はいる。
相手のことを調べ、相手の視界になんとなく自然にいる。
こういう状況を作り出すことは案外難しくないのだ。
最近のSNSなどの情報量の増大によって情報は簡単にポケットの中にある
小さなデバイスで手に入れられるようになり、リテラシーだのモラルだのが
危惧されているが、少し頑張れば、昔であれ、ある程度のことは分かってしまうのである。
私たち、好きなカフェも通うスーパーも同じだったです。こんな偶然ある?
答えは 全然ある。 だ
カフェ好きは大体、そこの商品を投稿したり、グッズを持っていたり、
知人に話すだろう。
スーパーなんてターゲットの最寄り駅、性別、年齢、店の広告さえあれば、
まあ数打てばあたる程度にはなっている。
つまり情報を制すれば、商談、人とのコミュニケーションにおいて
自分に都合のいいように誘導することが可能だ。
級友になって2か月、それなりにクラスメイトのことを把握できてきたところで、
宮田綾香がどのような人間であるか考えてみる。
端的に言えば、完璧に近いと言える。考え方次第であら捜しなどいくらでもできるから深く考えず、自分の主観に近いものとして受け取ってもらえばと思う。
文句なしの外見、穏やかな面倒見のいい女子高生だ。
異性にも人気なのもよくわかる。
この学校に来たのも恋愛に興味がないからであって、彼女を変えることができたら、
たくさんの生徒を動かせる予感はしている。
しかし、彼女の恋愛の興味がない理由はおそらく、必要ではないのだ。恋愛が。
孤高という表現が適切なのかもしれない。
彼女に似たような女性は理想が高いということも頭に入れなければならないが、
他の男子生徒との会話からなんとなくその線は細く薄い。
なかなか自分のことは話してくれない彼女のコンピュータが好きという情報をもとに
俺たちは彼女と会話を切り出し、恋愛に触れてもらえることを試みる。
「パソコン大好きな、みやっちー」
7時間目終わり、ホームルーム前の小さな時間に水無月はアプローチを仕掛けた。
それなりのラリーをして、本筋を話す。
「一緒にさ、恋愛ゲームつくろうよ」
彼女の趣味や、彼女を恋愛に触れさせる目的に優れた案である。
恋愛趣味レーションゲームが学校端末でリリースされたときの宮田の反応を確認していなかったため、適切かどうかは分からなかったが
もしだめならゲームでなく他の目的で恋に関わってもらえるよう設定するのみだ。
ただし、もし興味があるなら是が非でも協力してほしい、
俺と水無月はあのシミュレーションゲームのリベンジを渇望しているのだから。。
彼女は答えを言うのにためらいがなかった。
基本的に自分の表情を他人に、ましてや高校生にだすつもりはまあないのだが、
革新があったのか、はっきり、目を見て告げる。
「ゲームなら、協力する。でも私の人間関係に首を突っ込むのは止めて」
彼女は俺たちの行動におそらく気づいている。
俺たちは情報不足だった。
さんざん情報について熱弁していたのが恥ずかしい。
自分に関する恋愛ごとにはうんざりしているのだろう。
恋愛が嫌いとなると俺たちの案は総崩れだ。
俺たちの恋愛シミュレーションゲーム計画は破綻に終わってしまった。
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