第8話 淡い再会
伊夢那翔太は数年ぶりの再会を昔と変わらないあっさりとした挨拶で済ました。
変装技術も熟達し、すっかりだまれされてしまったわけだ。
ある生徒が奇妙なタイミングで話しかけてきたわけ、
手慣れた雰囲気の誘導がこれで腑に落ちてきた。
エンターテイナーを呼称する翔太は秘密が多い。
配属されたことを秘密にしていた訳や、どうしてあの日から姿を
消してしまったのかを聞いてもきっとはぐらかされるだろう。
とりあえず自発的に話してくれるのを待つ。
「変装、上手くなったな。
さすが毎日毎日、授業も出ないでやってだけある。」
適当に世間話をするつもりだったが俺は色々と思うことがあったらしい。
むき出しな感情を投げつける。
「ありがとな。おかげでほら」
とくに気にも留めず、俺の瞬きに合わせ翔太はまた先ほどの女子高生に変身した。
小道具をどこから取り出しているのかはまた確認することはできなかった。
じゃあまたね、天ヶ瀬君と元気な女子生徒はそう言って軽やかに階段を登って
行った。とりあえず情報共有が先と判断して水無月に翔太のことを伝える。
彼女はその名前を聞いた瞬間、空中に焦点を合わせ、微かな困惑が浮浮かんだようだった。俺たちの代であいつの名前を知らないわけと思われるから、
何かしらの関係でもあるのだろう。
教室は影の暗殺者が軽くブームになりつつあった。
教室が昨日よりも暖かい。
今年の梅雨は遅く優しい斜光が微笑むように俺たちを受け入れてくれる感じがした。
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