第3話 最高のシチュエーション
教室の後方、退色したカーテンが微かな春の光を通す。
彼女は窓辺の席に腰掛け、外の桜の花びらが風に舞う様を眺めていた。
俺はそんな彼女を見つめている。二人だけの静寂が空間を支配していた。
春、出会いの季節、もし目の前にいる彼女がブルースターでなければ、
どれほど良かったか。
ブルースター - 非リア充撲滅委員会に所属する人同士の恋愛は基本認められない。
俺たちは人の人生を豊かにするために行動しなければならないからだ。
先祖が代々、30万年以上も恋愛というプロセスを経て現代人は存在している。
しかし技術の発展により恋愛をする労力を惜しむ割合が増えている結果が得られた。短期的な快楽にたっぷり浸かってしまっているため恋愛活動を億劫とする人が
増えてしまってた。
顔を見ればわかる。
だから活力に満ち溢れている人はより恋愛経験を積むことができる。
俺たちは人を変えるためにまず自分をかえなければならない。
そうして変わっていった人間がこの組織に所属する。
したがって当然、一般人よりも魅力的なのは疑いようのない事実だ。
だから当然非リア充撲滅委員会発足当初は組織内カップルだらけになった。
組織内で付き合い、現状に満足してしまった人達は任務中を放棄して遊戯。
これ以降、組織内の恋愛は禁止となった。
付き合うという定義は曖昧なので一応組織内では'5則'としてまとめられている。
行動せずして得られるものなし。
俺は最高なシチュエーションを堪能できたので水無月結花と構内を探索しようと
声をかける。
「少し話があるんだけど、屋上で二人きりで話せる?
ちょっと特別なことを伝えたいんだ。」
声は含みを感じさせるように丁寧に落ち着いてそう持ちかける。
無論、これは水無月をからかうための冗談だ。
穏やかな空間に生じる春の風。自分でやってて恥ずかしさを覚えるくらい
ロマンティックだ。
彼女はしばらく黙った。現在の状況を的確に整理しているのだろう。
3秒後彼女は笑顔で回答する。
「違う! なんで今告白しないのよ 完璧なシチュエーションだったのに、
後、声かけるのに時間かかりすぎ、帰ろうかと思ったよ。」
水無月結花、彼女は燦燦高校に正規で入っているわけではないため
情報は持っていないがおそらくこいつは恋愛マニアだ。恋に恋をする少女。
なるほど、まさにこの任務に適任だ。
「告白したら、5則に反するだろ」
「あれは付き合ったらです~ 振ればなんの問題もないでしょ
てんてんちょっと浮かれすぎてない?
今のまんまじゃ私、どこも一緒にいってあげな~い」
きついな、彼女の見た目からは、そんな冷たいセリフが出るとは思わなかった。
澄んだ瞳、大きくて優しげな目、柔らかく微笑む口元――
そのすべてが温かみを感じさせるのに。
これから好感度上げて園芸用品店に一緒に行ってもらえるよう、頑張るか。
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