第5話 見ているだけでムカつく!~エスカレートする暴行~
監禁第一日目の12月19日午前9時、組事務所に他の組員が来るので平間は組員ではない丹野たちを退去させた。
丹野、大場、猪坂、高橋は里美を連れて自分たちが住んでいる青葉区立町のマンションに転じるが、大場にとって里美は見ているだけでムカつく存在だったようだ。
ケータイをいじっているのが気に食わないと高橋と一緒に顔を数発殴り、蹴っている。
それから実家の母親からケータイに電話がかかってきたので、「からまれていたところを先輩に助けられた」などと言わせた。
監禁されていることを隠すためだ。
その後、いつもバイトが終わる時間に今度は母親のケータイに電話をかけさせて「レディースにからまれたところを先輩に助けられた」と同じようなことを言わせてから、外部と連絡できないよう里美のケータイを破壊した。
当初この監禁は顔の腫れが引くまでのはずだったが、大場たちはそれをぶち壊しにするようなことをし始める。
何というか、里美を見れば見るほどどれだけいじめてもいじめ足りなくなってきたらしい、理由をつけて再び里美を殴り始めたのだ。
しかも「寿人、こいつオメーに犯られたって言ってるよ」とか言って彼氏の丹野も焚きつけ、丹野も丹野で「んだと!?テメーみてーなの犯るかボケェ!!」と大真面目に怒って里美を傘の柄で殴る。
「お前見てるとマジムカつく!ムカつく!ムカつく!ムカつく!!」
「痛い!痛い!やめてください!許してください!」
泣いている姿を見ると余計加虐の炎がたぎる。
極悪女の大場はもっともっと泣けとばかりに足でガンガン里美の頭、脇腹、足を踏みつけ蹴り上げ、猪坂と高橋も加わり男二人と女二人で無抵抗で泣くことしかできない里美をリンチ。
さらには訪ねてきた兼田と赤塚も「オレらもやらしてくださいよ」と面白がって参加、その後も「ジャンケンポン殴りゲーム」と称して里美を殴って遊び続ける。
大人数で女の子をよってたかってボコボコにするなんて、「どれだけ自分たちが最低な弱い者いじめをしているか分かっているのか?」と彼らに正論を言っても無意味だ。
こいつらはヤカラの集団なんだから。
逆恨みでここまで痛めつけている大場も大場だが、ここにいる奴らはヒトをいたぶるのが大好きで恨みがあるとかないとかは関係がなく、たとえやりたくないと思っていてもやらないと後々他の奴らにナメられて面倒なことになると考えている連中なのだ。
翌20日の午前1時に平間と伊藤が立町のマンションに来ると、里美の顔は一日中殴られて倍に腫れあがっており、これでは余計家に帰せない。
里美にとって地獄以外の何者でもない監禁が本格的に始まった。
今まで着ていた服を全て脱がされて、代わりに着せられたのは上下の無地トレーナーで、これは事実上里美の囚人服になる。
大場たちは里美を連れて組事務所、立町のマンションや知人の家などを転々とすることになるのだが、移動の際には後ろ手に手錠をかけてトランクに入れていた。
そして「挨拶がない」「敬語を使わなかった」「言ったことを覚えてない」など理由をつけては四六時中拳で殴り、顔は両目がふさがるほど腫れて紫色を帯びるほど変形する。
「ごめんなさい」「やめてください」「お家に帰してください」と何度も涙ながらに哀願したが全く効果はない。
里美は何の落ち度もなく無抵抗であるにもかかわらずこの外道集団に痛めつけられいじめられ続ける。
21日、丹野らならず者一行は里美を車のトランクに入れて宮城県北部にある丹野の知り合いの女性のアパートに向かった。
この日の午前中は崖から彼女を突き落とそうとすらしていたから、もうすでに死んでも構わないと考え始めてもいたようだ。
くだんの丹野の知り合いの女性だったが、一行がやってきたので自分のアパートに入れたとたんにびっくり仰天する。
何と顔がグロテスクに変形し、着ているトレーナーにべっとりと血や吐しゃ物をつけて後ろに手を組みっぱなしの人物が髪の毛をつかまれて一緒に入ってくるではないか。
髪の毛が長いのと小柄な体から女だとかろうじて分かった。
その女は無残にも後ろ手に手錠をはめられており、「おめえナニ手ぇずっと後ろに組んでんだ?バカじゃね」とか言われていたが、それを誰がやったかは決まっている。
丹野は「こいつは約束破ってウリやってた女なんだよ」とアパートの主に事情を話し、その制裁だと言って部屋の中で面白半分に凄惨なリンチを始めた。
しかもふざけた演技までしている。
一味の一人、兼田は「みんなのためにコイツは俺一人でボコったことにして、警察に出頭する」とわざとらしく言い出し、「しばらくお別れだな、幸恵」と彼女である赤塚にしみじみ言うと、「なんでアンタだけが捕まるの!?そんなのイヤ!!おめえのせいだ!」と叫んで三文芝居に乗った赤塚が里美の胸倉をつかんで彼氏の敵討ちだとばかりに顔面を殴る殴る。
「幸恵がかわいそうだろ!」などと他の面子も加わり代わる代わる変形した顔から血が飛ぶほど殴って、丹野は勝手に部屋のフライパンを使って里美の頭を強打。
フライパンがへこんだくらいだから相当なダメージだったのだろう、里美は失神して痙攣したばかりか失禁までした。
「くせえ!こいつ漏らしやがった!!」「糞っ垂れ女!!おい、起きろよ!」「水につけろ水に!おい、幸恵!服とズボンとパンティ脱がせろ!ケツ洗え!」「あたしがですか~?うわ!きったね~。おえっ!この女くっさ~い!」とこれまた勝手に風呂場を使って服を脱がせて水をかけて正気に覚まさせると、また顔面に根性焼きなどのむごいリンチの再開だ。
アパートの主の女はそのあまりのむごたらしさに見ていられない。
あの子かわいそう、ウリくらいであんなひどいことしなくても。
てか、ホントくさい!私ん家でなんてことを…。
見ないようにずっと目を背けながら、「私仕事行くから」と言ってそそくさと家を出ていく。
彼女は里美のことを気の毒に思いつつも、後難を恐れて警察に通報することはついになかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます