第2話 慣れとは恐ろしいものだ…

自分の要望で乙女ゲーム〈アンリミテッドラバーズ〉の世界に転生してから早5年が過ぎた。

転生してすぐは赤ちゃんで何もできなかったが、今はどこにでも自由に出歩けるほど成長した。

転生した先はソシエーヌ家という伯爵階級であり、家柄ガチャは当たりだった。

しかし、それ以外は、はずれであった。

「アリスちゃーんっ!」母〈ルミア・ソシエーヌ〉が自分の名前を呼ぶ。

アリス、〈アリス・ソシエーヌ〉その名前は自分が転生した人物の名前だった。

〈アンリミテッドラバーズ〉いままで何十週もプレイしてきた俺だがアリスもソシエーヌも聞いたことがない、その点は自分の「モブキャラで」という要望を汲んでくれた彼女には感謝している。

俺は〈アンリミテッドラバーズ〉のストーリーを壊さないけどできるだけ近くで主人公と攻略キャラたちとの関わりあいを見ていたいだけなのだから。

しかし、アリスという名前に問題があった。

もし、「アリスという名前を子供に付けるとしたら男か女どっち」と言われたら。誰しも女と答えると思う。しかし、家の親はその考えの真逆を答えた。

俺、アリス・ソシエーヌの性別は男であった。

なぜ俺がアリスになったのかにはある理由があった。俺が生まれた際に俺の姿がまるでお人形さんのように可愛いかったため、親は俺の名前を絵本に出てくる〈アリス〉と従者の反対を退けて名付けついでに性別が男なのに女として公表しやがったのだ。

初めてその話を聞いた時は俺は親に怒った。

男なのに男らしからぬ名前と性別を貰いそのおまけときたことか俺の親は親バカであった。

冷血伯爵と呼ばれている父〈ロドワルト・ソシエーヌ〉は家に帰るとそのあだ名が嘘であったかのように〈アリス好き好き人間〉になる。

ロドワルトは仕事帰りにお土産としてよく俺にプレゼントをした。

くまさんのぬいぐるみ、ふりふりのスカートなど俺が男であることを知らないかのように女児向けの物を俺にあげた。

従者も最初は異議を申したが時間が経ち、親バカ行動にはなれてなにも言わなくなった。

最初は女の子の服や男なのに髪を伸ばされたりなど恥ずかしくて嫌だったが何年もその生活をしていき俺はこの生活に慣れてしまった。

逆に今更髪を切り男の子の服を着るのが恥ずかしくなり、俺は男の娘という沼の中にどっぷりとはまってしまったのだ。

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聖女候補に選ばれましたが男の娘です 床柱熊 @Tokohashikuma

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