第十二巻 嘘つき姫と涙の理由編④
第四章 発端の真実
黒の甚平姿で名花市の空を行く。だけど当ても無く動く訳じゃない。此方も頼れる人に話を訊きに行く予定だ。木崎先生、以前、聖剣闘争で俺とマリを助けてくれただけでは無く、死に神との戦いでもヒントをくれた人だ。若しかしたらなにか今回の一件も解る事があるかも知れないと踏んだ。
総合病院。此処で働いてる木崎先生に用がある。俺とマリはヘリの止められるポートへと着陸し、屋上から病院内に入り込む。
確か、この角を曲がった先が……此処だっけか? 処置室ともなんにも書かれていない暗そうな部屋をノックした。
「どうぞ」
よかった、木崎先生の声だ。俺はドアを開けて中に入る、すると閉めたままのカーテンとその間から零れる夕日が視界に飛び込む。
「お前さんか。どうしたんじゃ、そんな慌てた様子で」
「先生、単刀直入に言います。俺の仲間がオルペウスとか呼ばれる奴に連れ去られました」
「オルペウスじゃと……? いや、話には訊いた事はあるがな」
「どんな話ですか?」
「はて、そんな大した情報では無いぞ。ただタルタロスとか言う奈落の住民であると言う事だけじゃ。しかしもう一人のあの活きの良い聖剣使いまで連れ去られたと言うのかの?」
タルタロス……シャルロットの言っていた通りか。
「はい、東条とユリアも……残ったのは俺と」
「はあい! 以前はお世話になりましたですう」
「なるほどのお……これも又、冥界絡みか」
「オルペウスが何処に居るか、なんとか解りませんか?」
白い髭を縦に撫でて答える。
「すまぬ、わしでは力になれそうにはないのお、聖剣闘争の事ならば多少は力に成れたのだがね」
「そうですか……そう言えば、先生はなんでオルペウスの事を知っていたんですか?」
「わしが以前持っていた聖剣『玲瓏』が詳しかったんじゃよ。最も玲瓏は死に神からわしを守って死んでしまったがの……」
「なんかすみません」
「いいんじゃよ、それよりも又なにか起きているのなら、気を付ける事じゃ。お主は聖剣闘争で一番優秀な成績を残し、この子を冥界一の聖剣にした功労者なのだからな。誰に狙われるか解ったもんじゃない」
「そうですね……解りました。他を探してみようと思います」
「うむ、でわな」
振り出しだ。俺は病院の屋上でマリを握ったまま、立ち尽くして居た。未だに誰とも連絡が取れない。流石に心配にだってなる。
オルペウスは何者だ。ペルもシャルロットも手出しが出来ないままなのか……何処かに反撃のチャンスは無いのか。
なにか見落としがあるのか? 情報に流されてるだけで、どれが本当なのか解らなくなっていないか?
――母上はオルペウスがタルタロスから放った屑星達の収拾にあたっているのだ
屑星、もう一度会えたら、なにか訊き出せないか? このまま当てが無くなるよりは幾分かマシだ。今はタルタロスから出てきたと言う屑星、あの喋る怪物を探そう。若しかしたら其処でペルと会う事も出来るかも知れないし。でもなんでオルペウスはタルタロスから屑星達を放つ必要があったんだ? くそ、疑問を持つと切りが無いな。仲間の命が掛かってるかも知れないんだ、とっとと屑星を探さないとな。
夜か。月が映える晴天だな、星々が綺麗に瞬いている。
「マリ、屑星の存在は感知出来ないのか?」
「それは難しいですねえ、そもそもタルタロスって、立ち入り禁止区画なのですよお、だから私も入った事が無いのですう、だから屑星さん達の反応がどういった物なのかも解らないのですう!」
「そうか。どうすっかな……いや待てよ。剣眼した状態でサーチアイを使えば――」
「それいいかも知れないですう!」
その案しか無さそうだ。俺は両手のフリーズソードを前方で回転させ、両腕を引く。
「マリ、剣眼っ!」
左目に蒼い炎が灯り、二本のフリーズソードは一本の太刀へと姿を変える。横に大きく太刀を振り抜き、左目の炎の揺れを確認すると、無数の反応がある様子。炎は不規則に揺れ、なにかの反応を示している。
「この反応は……? マリ解るか?」
「之は聖剣の反応では無い様ですう。でも、冥界の者や聖剣を持つ者にのみ反応するのがそのサーチアイの筈ですよお!」
弱弱しい反応ばかりだ。東条と戦った時はもっと激しく揺れていた事を考えると、東条の反応は無いと思うべきか。
近場に反応がある。俺とマリは急ぎその場へと急行する。名花市の高層ビルの屋上から反応がある。其処まで飛び、到着すると辺りは静まり返っていた。赤く点滅するヘリポート周辺、今まで弱かった反応の一つが突如強くなり、それは左横をサーチアイが示している。
「フシュルルル」
俺は振り下ろされてきた鉈を回避し、左足を軸に右足を半月描いて後方へやると構える。
「今度は随分と好戦的な奴だな、俺はお前に話があって来たんだが?」
「ヴぉれにはダイッ!」
見た目はウンタンシネマで見た奴と代わり映えしないが、好戦的なタイプなのか? 左手の空いてる手で俺を掴んで来ようとするが、俺は身体半分で躱し、右手に握るフリーズソードの刀背打ちで屑星の身体へと一撃を見舞う。
「!」
そんな柔な攻撃は効かんとばかりに左手の今度は鉈を持っている腕を下から上へと斬り上げて来る。マリが氷壁を創り出し、その鉈の刃は氷壁へと刺さる。
「話をしようっつってんだ。お前達はなんで人間界に居るんだ?」
「ゴロス殺ス!」
「そんなんだからペルに殺されんだよ……お前達の目的を教えろ」
「モクデキ、ヴぉまえら人間殺スダメ」
俺は半眼になった。
「殺す駄目なのか、殺す為なのか、ニュアンスしっかり頼むわ」
「ヴォォォオオッ!」
全ての腕を使って俺を捕捉しに掛かって来たが俺は高く飛び、回転する身体で再度刀背打ちを屑星の右肩へと叩き込む。更に着地と同時に、低い軌道での足払いを太刀で仕掛ける。でかい図体が斜めに倒れ込み、空中の水素を凍らせた弾丸二つを鉈目掛けて放つ。屑星の手から凶器二つがビルの屋上を滑る。
「お前等にとってオルペウスはなんなんだ? ただタロタロスから放ってくれただけって訳じゃないだろ」
「タルダロズ……ぐらい、暗イ……オルペウス様、ヴれ達ヲ暗い底ガラだずげでクレた……機会をグレだッ」
「オルペウスが助けた……か、だけどそれはペルにとって、仕事が増えただけだろ。お前達を殺して回ってんだから。ペルは解るか? ペルセポネだ」
「! ウガアアアアッ」
「な、なんだよッ! おい!」
屑星は突然走り出し、鉈を手にすると――
「なにするつもりだ、待てってッ!」
自分の心臓を鉈で切り裂き、絶命した。
「なん、なんでだよ……」
サラサラと砂へと変化し、夜風に舞う屑星の亡骸。
「ペルの名前聞いただけでアレか。タルタロスに屑星達を閉じ込めてるのはペルなのか……? にしても名前を聞いただけで自分で命絶つとはな、相当恐れられてるって事か……?」
「アキト様、どうしますかあ? 他の反応にも向かいますか?」
なんかこれ以上、屑星から聞き出すのは無理な様な気がしてきたな。ペルの名前を出さなきゃいいのか? なーんか又襲って来そうだよな。でも、正直あいつ等から話を訊く以外に方法は無い、か。
すると、左目のサーチアイに強い反応が現れた。東条か? なんにせよ行くしか無いだろ。
月明かりの空に駆ける蒼い一線、俺とマリはサーチアイを頼りに強い反応を示す場所を目指して飛んでいた。しかし、反応があっちこっちに瞬時に移動して中々捕らえられない。こんな速度で移動するのは流石に東条でも無理だろう。って事はペルか? オルペウスか? どちらにせよ、今会うべき人物だ。
「さっきカラ、うろちょろとオレ様を追うなダナ」
突然、上空からゲンコツされた。しかも聞き覚えのある声と口癖だな、おい。
「なんで審判ヌイグルミがいるんだよっ!」
そう。月に照らされて現れたのは聖剣闘争でジャッジを務めたあの憎たらしいヌイグルミだった。
「知っての通りダナ。今人間界にはオルペウスと、タルタロスから放たれた奴等がいるダナ」
さっきの強い反応が消えた。あーもう、このド腐れヌイグルミのせいだ。って、あれ、なんでこいつ今の世界の状況よく知ってんだ? それだけじゃない、さっきからうろちょろと追ってた? こいつを?
「そういや、俺は意識が飛んでたから覚えてないけど、聖剣闘争での最後の戦い、途中からお前逃げただろっ! よくジャッジが務まったな」
継ぎ接ぎだらけの兎のヌイグルミは両腕を組んで偉そうに言い放つ。
「逃げたとは失礼ダナ。オレ様はあの場に居なくても当然だったんダナ」
「なにを意味わからない事を……」
継ぎ接ぎから溢れそうな綿を手に取り、それを俺の目の前で食べる。なにがしたい。こいつの行動は本当に意味が分からないんだよな。
「アキト、お前の仲間はどしたダナ」
「それが……」
「知ってるダナ、失踪したんダナ」
なら聞くなっての……。って知ってんのかよ。
「なんでもっと早く出て来ねーんだよ! こっちは色々大変だったんだぞ」
「チッチッチ、ヒーローは遅れて飛び出たジャジャジャダーナン」
やっぱ腹立つなこいつ。いっその事綿毛食って死んでくんねえかな。
「之はモウ人間界ダケの問題では無いダナ、お前をある所ヘ連れてイクダナ、其処デ答え見つけルダナ」
「何処に連れて行く気だ? マリも一緒だよな?」
「ペルセポネにヨって聖剣の力が戻ってイルノナラ、勿論聖剣も連れて行クダナ、チョーとばかり眸ヲ閉じろダナ」
なにがなんだか解らないが、空中で俺は双眸を閉じた。なにが起きるんだ、つか何処に連れてこうって言うんだ。
「おい、まだかー?」
なにも返事が無い。なんか肌寒くなって来た。未だ夏場なのにな。しかしいつまで眸を閉じていればいいんだ。いい加減開けるか、別になにかされる訳でも無いんだし。俺はゆっくりと双眸を開く。
「は?」
何処だここ。
見渡す限り灰色、巨大な空洞に穴が幾つも開いていて其処からなにかが飛び出てきたり飛行する人間? が沢山いて目立つ。
「アキト様!」
「マリ、此処は……?」
「此処は冥界ですよお!」
はい? ちょ、嘘だろ。此処が冥界……。ユリアやシャンティア、そしてマリの故郷って事かっ、て待て、て事は俺は死んだのか! そんな話訊いてないぞ!
(落ち着くダナ、時を少シばかリ戻した冥界の光景なのダナ、お前達ハ其処に存在している様デ、存在セヌ者ダナ、後は勝手にシロダナ、せめて真実ダケでも掴んで帰れルといいダナ。最後にヒトツ忠告ダナ、その状態は長クは持たないダナ以上……アバーヨーダナ)
ジャッジってこんな力も持っていたのか……。いやいや、マジかあのヌイグルミ。
「時を少し戻した状態の冥界……? 真実ってなんだよ、今の俺達は存在している様で存在してない……マジか」
マリが通りすがりの怪物らしき人物の肩を叩こうとするがすり抜けた。鬼にも似たその怪物は俺達の存在を本当に認知していない様子だ。
「凄いですねえ! まさか、こんな形で冥界に戻って来るなんて思ってもみなかったですう!」
「ここが……冥界!」
海外旅行ですらした事無いんだ、そりゃ冥界とは言え興奮するって。ドクロの頭が其処等中に飛び交い、そのドクロがまるで花火の様にでかい音を立てて弾ける。上空が賑やかだ。マリはスキップしながら、俺に手招きをする。
「こっちですよお、アキト様」
「何処に行くんだ?」
「私の自宅ですう」
露店の様に店と思われる軒並みがあり、道路と思われる其処は泥で一杯だ。ギッシリと家と思われる建造物が並ぶ其処にマリの自宅があるらしい。この身体だからなのか、マリも俺も聖剣を使わずに意思を持つ先に飛行して行けた。聖剣を使わずに飛べるのは不思議な気分だ。光の届かない冥界では、住民達が打ち上げまくってるドクロの花火で照らされていた。
「なーんにも無いですけどお、私の家ですよお。ふふ、こんな形でアキト様を此処に招くなんて思ってもみなかったですう」
マジかなにも無いぞ。どんだけ品祖な暮らししてたんだマリは。
「えへへ、私、聖剣闘争に出るって決まってから、自宅の物を処分しちゃったんです。帰る時はハデス様の聖剣として、と思っていたので!」
「そのハデス様は一体なにをしてるんだか。自分の妻と一人娘が人間界で頑張ってるっつーのにな……ふう、ゆっくり観光でもしたいが、タイムリミットがあんだっけな。真実って言われてもなあ、何処に行けばいいんだ」
マリは膝を着いてテーブルっぽくなっている泥の塊の上に置かれるなにかついて見下ろしていた。
「それは?」
「これは、私のお母様が立派な聖剣になれる様にって作ってくれた御守りみたいな物ですよお……聖剣闘争でなにが起きるか解らなかったので自宅に置いといたのですよ」
「マリのお母さんか、どんな人なんだ?」
「優しかったですよ、優しすぎちゃったんでしょうか……」
珍しくマリの面持ちが暗い。
「お父様がロクな方では無かったので、タルタロスへと堕ちたのですが、お母様は罰せられると解っていてタルタロスへと、禁止区域なのに入って行っちゃったんですよお……」
「そうか……なんか悪いな、変な話になっちゃったな」
双眸を閉じ、拾えない御守りへと手を翳しながら首を左右に小さく振る。
「大丈夫ですよお! 今の私にはアキト様やミサキ様、それにヒロキ様と東条様、後ユリアも一緒に居てくれるので!」
そっか、そうだな。そんな奴等を早く見つけてやらないとな。よし、気合い入れて冥界のどっかにあるつー真実を見つけておかないとだな。
「それなら、タルタロスに行って見るのはどうでしょうか?」
そうか心が読めるって言うのは変わらないんだな。今の俺達は存在しない者達だ、禁止区域もなにも無いしな。
「はい!」
俺達はマリの自宅から遠く離れた坂道の続く縦穴へと到着する。冥界の住民達の姿も無く。底は暗くてなにも見えない、まさに奈落って感じがする。飛行出来るから坂道も気にせず縦穴をど真ん中から降りていく。道中から、坂道を降りる屑星の姿が、並んでタルタロスへと向かっていた。両手に鉈を持った屑星から呻き声が聞こえてくる。その屑星の群れを通り越して――。
「これがタルタロスへの入り口ですかねえ?」
縦穴の底に辿り着く。するといきなりとてつもなくでかい三つ首の犬っぽい奴が吠えてきた。之がゲームとかに出て来るケルベロスって奴か、とんでもない迫力で、吠える毎に唾液が飛び散り、凄い酸なのが見てとれた。あっちこっちの壁や床に酸で溶けた跡がある。
「こ、之って気づかれて無いんだよな? やたらと吠えてっけど……」
俺とマリはなんとなく忍び足でケルベロスを通り越し、その先の門前へと辿り着いた。この先がタルタロス、俺達は意を決して門へと飛び込み、門をすり抜けた。
……暗いな。それに苦しいと訴えかける様な呻き声がする。
「あ、あの光。ペルセポネ様ですよお!」
「なに!」
片膝を着き苦しそうな背中、あれは確かにペルだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」
無数の屑星達に囲まれるペルは焼け爛れた顔の皮膚を露わにし声を上げていた。ゆっくりと立ち上がると黒鉄の銃を右手に構え、左掌で顔を覆う。
「この様な事が許されると思っているのですか……オルペウスッ!」
オルペウスだって? 何処だ!? 俺は眸を凝らす。
「私から聖剣の力を奪い、自分の更なる力の糧とする愚行、許されるものではありませんよ……オルペウスッ!」
「屑星達が騒動起こしているからって単身でタルタロスを訪れるからそうなるのだ、幾ら管轄だからって、まだまだ甘いねえ?」
まさか――……。いや間違い無い、ペルに銃口を向けられているオルペウスと呼ばれた人物、それは……シャルロットと名乗ったあいつだった。なにが一人娘だ、ふざけた事を抜かしやがって。こいつが全ての元凶、ペルに火傷を負わせ、屑星達を人間界へ放った張本人か?
「姫はお前が気に入らないのだ……こんな暗く呻き声しかしない、死んだ空気に晒されて無様に生きながらえさせられ――……この屈辱お前を殺して払えるのなら、冥界等、消えてしまえばいいのだ」
「貴方には強大な力が宿っていた。その使い道を誤ってしまった己を悔いる事はしないのですか」
「道を誤った……? 聖剣闘争の結果、どうなったのだ? 冥王は聖剣を持たず、冥界を束ねようとした愚か者なのだ、そんな愚者に刃を向け、なにが悪いと言うのだッ!」
「……ッ! 貴方はこの場で私から聖剣の力を奪った。冥王は私を、私こそを真の聖剣とし持つ事を覚悟に決めたのですよッ! 貴方に二と重なった聖剣の力は危険過ぎますッ! 返しなさい私の力をッ! そうで無ければ、あの子達が又、涙を流す事になるのですッ」
俺がマリを手放さなかったから……こんな事になってたのか。嘘だろ、オルペウスは家族を取り戻す為に冥界に来た落ち武者なんかじゃなかった、こいつは……――冥界の聖剣だったんだ。
「無理だねッ! もう動き出すんだよ、姫の計画は……お前を殺し、姫こそが本当に、冥王に持たれるべき聖剣だと証明するのだッッ! さあ屑星達よ、今までの恨みを晴らす時なのだ! こいつを殺してしまえ!」
「望みは未だ消えていません……ッ」
――……! ペルは咄嗟の判断で人間界へと逃げる手段を取る。周辺の重力がおかしく成りそうな程に強大な魔力を持って屑星、オルペウスと共にタルタロスから消え去った。
之が真実――……。ペルは自分の責を払う為に屑星達を殺していた。だけど真の悪でもあるオルペウスを人間界に連れて来た、その責は? どうするつもりなんだペル……。
「そんな……ペルセポネ様が私の代わりにハデス様の聖剣になられるつもりだったのですか……」
誰も居なくなったタルタロス内、マリは両膝を着き、泣いた。本来なら自分が負うべきだった使命だ、それを冥界の王、その直々の妻が成そうとしていたんだ。悔しいだろう。自分さえあの時、冥界に戻る選択をしていればと……。でもマリは行こうとしていた、人間界を去りハデスの聖剣になるべく一歩を踏み出していた。それを止めたのは……俺だ。
「泣くなマリ。未だだ、終わってなんか無いんだ。俺達は事の発端しか未だ知らない」
「はい……ッ」
「なんとしてもオルペウスを止める、そして仲間全員取り返してまた夏休みを過ごすんだ……」
光が差し込んでくる。あのヌイグルミ、本当に何者だよ。兎に角、情報は得られた。
「その時の為の涙だ――……とって置け」
「解りましたッ!」
第十二巻 完 第十三巻へ続く。
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