坂の下と扉

あさのたけし

坂の下の扉

古びた街の坂下には、不自然な程新しく不思議な程人の気配のする一軒家が建っている。坂下条他は、何げなく、扉を開く———。

そこは暖かな家族が待っていた。いや、待っているのだ。条他は知らない此処が閉ざされた村である事。此処が行ってはいけないところだと、いう事。それに気づくには自分を強く責めばならない。

「あー!いた!部屋上探したのに、居ないとかお兄ちゃん怪物?」

「お前は……?」

「"知らないよ、そんな事"。それよりほら、ご飯ご飯」

「あ、ああ、そうだな」

見ず知らずの◼︎に起こされた。気味が悪いが暖かい。そんな日々の始まり、始まり。

階段を降りる『オレ』は駆け足で降りゆく。

「おはよう。ご飯出来てるわよ」

「ありがとう。母さん」

「あら?私は"母さんじゃないわ"」

?、??。なんなのだろうか。この違和感。彼はそう思いながらもいただきます、とご飯に手を付ける。

飯は———普通に美味しい。そこはかとなく暖かさを感じる。A、嗚呼、これが幸せか。

「じゃあ、俺は先に学校行ってるわ」

「いってらっしゃい」

そうして外へ出る。眩しい太陽に爽やかな風。八月下旬にしては秋の到来早くないか?と、"彼"は言った。

それはそうと、街の人たちが俺を見て怯えている。

「———ブツよ!カイ———が!」

そうか。遂に。

「止まりなさい!!!!!」

「なんですか?」

「止まらないと、撃つぞ」

警察官が拳銃を手に条他を狙う。

「応援要請、応援要請願う」

『ダメです!怪物が街で暴れています』

「怪物?どういう事だ」

『分かりま……グア!!』

とりあえず、不味い。此処は逃げなくては。———でも、何処に?

ええい、走れ!


条他は全速力で家に帰る。高速を超え音速を超えて。

瞬間、変な違和感がした。重くてネッチョリとした気持ち悪い感覚だ。ああ、きっと。


チャイムを押す。

ダレモデナイ。ダレモデナイカラ、ジブンデアケタ。

すると、

「ひえっ」


条他の母親と妹が血を流し、倒れていた。


そして嫌な予感は的中した。リビングには、「俺が———死んでる」


そして現実(いえ)を飛び出して坂下の家へ戻る。


ああ、わかった。全部、わかった。だからすべき事の前に謝らせて欲しい。


———ただいま。

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坂の下と扉 あさのたけし @ggang_745

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