角ウサギと弱さの定義

「今日もいい天気だな〜」


アニメ版【バトサモ】の世界に転生してから、数日が経ち.....俺は、この世界を満喫しつつあった。


だって、テレビをつければプロサモナーのバトルが見られるし、何より、隣には相棒のカリバーがいる。


俺の夢を叶えてくれた、ステラ・デウスには感謝しないとな。


「今日のキューショクは何だろな〜」


そんな俺を尻目に、給食のことしか頭にないのか、即興で考えたであろう歌を歌いながら、道を歩くカリバー。


「全く......カリバーは本当に食べることが好きだな」

「だって!!食べなきゃ立派な騎士になれないだろ!!」


俺の言葉に対し、剣をブンブンと振りながら、そう言うカリバー。


......可愛い。


と、そんなことを思っていたら


「プキュ!!」


どこからか、声が聞こえてきた。


「何だ?この声?」


そう思いながら、声のした方に行くと....そこでは、金髪の男と角が生えたウサギがいた。


「お前は弱い、だからデッキから外す。それ以外に理由などない」


うわぁ、いかにもな過激発言してるなぁ。


.....というか


「どっかで見たことがあるんだよな....」


髪色が派手だし、メインキャラっぽいんだよな。


う〜ん......あっ!!思い出した!!


神話・伝説系のレジェンダリーキングダム使いの西園寺キョウヤだ!!


「なぁタマ、アイツって西園寺キョウヤだよな」

「あぁ、恐らくは.....な」


確か......序盤の頃の西園寺キョウヤは、弱いカードを容赦なく捨てる上に、過激な発言をしてたから、視聴者をドン引きしてた上に、最終的には、ムサシをやってボコボコにされて、かませ犬扱いされてたっけ?


「プキュキュ!!」

「お前が弱いのは紛れもない事実。弱いカードを持つこと自体、無意味なんだよ」

「プキュ....」


......ヤバい、何かめちゃくちゃ腹が立ってきた。


「.......おい、そんな言い方はないだろ」


キョウヤの言葉にイライラしてきた俺は、物陰から出て、思わずそんなことを言うと


「あ?」


キョウヤは、イライラした顔でこちらを振り向いた。


「お前は......?」

「俺は言乃葉タマ。こっちは相棒のカリバーだ」


俺がそう言うと、剣を構え、警戒するカリバー。


そんな俺達を見たキョウヤは


「ほぉ?弱いモンスターに同情して、弱い輩が来たか」


見下すように、そう言った。


「さっきから弱いを連呼しているけど、この子ってそんなに弱いのか?」

「弱いとも、何せ......たった一枚のカードを破壊するだけの能力など、ほぼ無力と言っているようなものだからな」


カード破壊?


「いや、地味に有能じゃね?」


キョウヤの言葉に対し、そう言う俺。


カード破壊系は、地味に厄介な能力だから、有能だと思うだけどな。


そう思っていたら


「.......何だと」


キョウヤは、分かりやすくイライラし始めていた。


「タマの言う通り、カードが一枚破壊出来るだけでも、凄いと思うぞ!!」

「プキュ....?」


カリバーがそう言うと、少しだけ反応する角ウサギ。


「それに、アンタがこの子を弱いを思っていても、誰かにとっては大切なモンスターかもしれないんだぞ?」


相棒の言葉に続くように、俺がそう言うと


「....それは負け犬の考え方だ」


キョウヤは、俺達に向けてそう言った。


「この世は弱肉強食。弱いカードを切り捨てなければ、強者にはなれない」


まるで、弱いカードはいらないと言わんばかりに、そう言うキョウヤ。


.......アニメ版【バトサモ】でキョウヤの言動を観てた時は本気でイライラしたけど、生で見るとより一層イライラするな。


「そもそも、お前らとコイツに何の関係がある?部外者は黙って」

「いるわけないだろ!!」


キョウヤの言葉に対し、そう叫ぶ俺。


「いいか!!どんなカードも状況に応じては強いカードになる。それが、例え弱いカードだったとしても、強力な能力を発揮することだってあるんだ!!」


キョウヤに対し、やや説教を行うような勢いでそう言う俺。


その言葉を聞いた角ウサギは


「プキュ.......」


目をウルウルとさせていた。


「フン、俺に説教をするつもりか?」

「今のお前に話が通じないことぐらい、分かってるさ。ただ」

「ただ?」

「その言葉、いつか後悔しても知らないからな」


俺がそう言うと、キョウヤは舌打ちをした後


「.....勝手にしろ」


そんな言葉を吐き捨て、この場を去るのだった。


「全く......【バトサモ】が流行っているとはいえ、酷い奴はいるもんだな」

「だな」


そんなキョウヤの後ろ姿を見ながら、そう呟く俺達。


すると、何かを思ったのか.....角ウサギは


「プキュ!!キュキュキュ!!」


と、俺に向けて何かを言った。


「えっと.....ドユコト?」


ダメだ、ウサギ語が全く分からん。


「このウサギ、たまに弟子入りしたいって」

「へ?」


はぃぃぃぃ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る