切札学園にて

TCG系アニメの世界では、大体そのカードゲームが大流行し、文化の一部として溶け込んでいる。


それは、アニメ版【バトルサモン】の世界も同じで


「行け!!ヒノザード」

「ブロックだ!!ネクロボーン!!」


俺の通う学校.....切札学園では、休み時間を使って【バトサモ】に勤しむ生徒がチラホラいた。


「ほぇ〜、流石はTCG系アニメの世界だなぁ」


【バトサモ】をプレイするクラスメイトを見ながら、そう呟く俺。


あ、そうそう。


この世界での俺は、言乃葉タマっていう名前らしい。


でも、モブキャラなだけあって、あんまり存在感はないけど。


「なぁタマ!!次の時間はキューショクなのか!!」

「いや、給食は次の次の授業が終わってからだよ」

「え〜」


俺の言葉に対し、分かりやすく不満タラタラなカリバー。


おいおい、どんだけ給食を食べたいんだよ。


そう思っていたら


「俺のラーメン!?」


机の上で堂々と寝ていたクラスメイト.....もとい、戦場ムサシが目を覚ました。


そういや、ムサシって勉強がそんなに得意じゃないんだっけ?


「おはよう、ムサシ」

「おはよう.......」


自身の幼馴染こと、アニメ版【バトサモ】のヒロインこと、桜田チヨコ.....通称チョコちゃんの言葉に対し、そう答えるムサシ。


.....いいなぁ。


「俺にも、女の子の幼馴染がいたらなぁ」


主人公とヒロインを羨ましそうに見つめながら、そう呟く俺。


一方、それを聞いたカリバーは


「お前.....チョコとかいう女と友達になりたいのか?」

「ファッ!?」


カリバーの言葉に対し、そう叫ぶ俺。


するとその瞬間、クラスメイトの視線が俺に集まったのは、言うまでもない。


「そ、そんなわけ....」

「よし、じゃあ俺が話を付けてくる!!」

「.....ん?」


俺がそう声を漏らすのを尻目に、カリバーはチヨコちゃんに近づくと


「頼む!!桜田チヨコ!!タマと友達になってくれ!!」


あろうことか、ヒロインの前で土下座をするのだった。


「え?」

「は?」

「ちょっ!?カリバー!?」


カリバーの言葉に対し、呆然とするムサシとチヨコちゃん。


そして、すぐに我に返ったのか


「え、えと......あなたは?」


と、カリバーに向けて訪ねていた。


その言葉に対し、カリバーは


「俺はカリバー!!タマのパートナーだ!!」


と、自慢げに答えた。


「タマ......もしかして、この子って言乃葉くんのパートナーモンスターなの?」


ハッとした顔で、そう言うチヨコちゃん。


てか、俺ヒロインに認知されてたの!?


「う、うん.....そうだよ」


チヨコちゃんに対し、俺がそう言うと....クラスメイト達がザワつき


「タマ!!お前.....いつの間にパートナーモンスターを手に入れたのか!?」

「良かったな!!タマ!!」

「ねぇ!!この子って何に属しているの?」


と、口々に聞いてきた。


「き、昨日、パパに買ってもらったんだ」


的なことにしておこう。


「へぇ!!そうなんだ!!」


俺の言葉に対し、納得したように言うチヨコちゃん。


.......何とか誤魔化せたな。


そう思っていたら


「そうだ!!せっかくタマがパートナーモンスターを手に入れたのなら、ムサシと戦ったら?」


突然、クラスメイトの一人からトンデモ提案をされるのだった?


「....はい?」


俺が?主人公と?


「遠慮しま」

「やるやる!!」

「ウソーン」


主人公ノリノリじゃねぇか!!


と、心の中でツッコミを入れていると


「何だ?バトルか?」


ムサシのデッキが光り輝いたかと思えば、そのデッキの中から、ムサシのパートナーモンスター.......【爆炎竜】ドラゴバーンが現れた。


「お前は......!?」

「俺はドラゴバーン。偉大なる炎竜の一族の一匹にして、ムサシのパートナーモンスターだ」


......デフォルメ化されているとはいえ、主人公の相棒だけあって、雰囲気が凄いな。


「そういうわけで、放課後にスタジアム集合な!!」


うん、これはアレだ。


断れないやつだ。


「良かったな!!タマ!!これで【バトサモ】が出来るぞ!!」

「ウ、ウン。ソウダネ」


こうして、不本意ながらも主人公と戦うことになった、俺なのだった。

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