第6話 神の罪
昔々あるところに神様が暮らす世界があった。そこに一人、責任感の強い神様がいた。その神様は自分が作り出した世界の全ての生き物を愛し、幸せになってほしいと望んだ。食べ物に困らないように土地や気候を整えた。その世界は豊かな食物と綺麗な川、美しい自然で溢れていた。
常に自分の世界に気を配る神様はいつも一人だったが最近、そんな神様にちょっかいをかける女神様がいた。
彼女は神様が一人でいるところに押しかけ、楽しそうに話をした。神様が無愛想に振る舞ってもそんなこと気にならないかのように笑った。その可愛らしい表情に次第に神様は心を開くようになった。
月日は流れ、神様はいつも女神様と一緒にいるようになった。性格も考え方も女神様に影響されに似るようになった。社交的になり他の神様とも交流するようになった。他の神様も喜んで彼を迎え入れた。
そして、彼の作り出した世界で一人の人間が自殺をした。
神様が世界を放置している間、土地は荒れ、食物が育たず少ない食べ物をめぐって争いが起きるようになった。そんな状況に耐えられなかった人間は初めて自らの意思で命をたった。
『この世界でもう生きていたくない』という意思表示だった。
神様はその時初めて世界の状況を知った。荒れた土地を、生き物の憎しみ、悲しみを知った。
そして自分の罪を知った。
彼は閉じ籠り何んとか己の罪を償おうと必死だった。
そんな神様を心配した女神様や他の神々は慰めようと必死だった。
「それはよくあることだから仕方がない」
「君が悪いんじゃない。弱い生き物が悪いんだ」
「だから気にすることはない」
神様は自分が初めて世界を、命を造った時のことを思い出した。
『全ての生き物が幸せに』
それが彼の願いだった。
「もう会わない」
神様はそう伝えるともう他の誰とも会うことができないように自らを深い闇に閉じ込めた。
そして一人で、気が遠くなるような長い期間をかけて世界を新しく作り直した。
もう2度と悲しむ者がいないように。
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