第14話 せくしゃるまいのりてぃ

―――――――――1ヶ月後。七海の店。カウンター席で翔が座ってる。僕はトイレに行っていた。


「七ちゃん。」

「うん?」

「僕は稜太がいいけど、稜太は僕でいいのかな?」

「あんたが不安になってどうすんの?」

「でも僕、自信ないよ…。」


「大丈夫。…もしだよ?あのバカが他がいいなら今頃女といると思う。あたしとかね?」

「七ちゃんは無いかな。」


翔が即そう返すと、七海が笑う。


「なんで?」

「えー。だって七ちゃん元男もとおとこだし」

「やっぱりそれあるかな?」


笑いながら翔の顔を覗き込む。


「無いと思う。」

「うん。でしょ?」

「稜太、僕でもいいくらいだし。」

「あんたは特別だよ。」

「特別?」

「そう。」

「なんで?」

「あいつ、本当にあんたが可愛いの。目に入れても痛くない。本当に可愛くて仕方ないの。」

「でも僕でいいかわかんなくなる…」


テーブルにつっ伏する翔を見て七海がカウンターから出てきて背中を撫でて頭を撫でた。


「稜太遅いな…」

「寂しくなっちゃった?」

「うん…」

「お腹崩してんのかな?」

「様子みて来るかな。」


そんな話をしてると僕が出てきて、

2人の様子を見て驚いた。


「え?え?、どうしたの。かけ。このおじさんに虐められたの?可愛そうに。」

「誰がおじさんよ。もう何もついてないわよ。」

「…あ、ヒゲ。」

「え??うそ。どこ?」


「ねーよ。」

「うわっ最低。かけ。こいつやめた方がいい。お姉さんが可愛がってあげるからねー。」


「……。」

翔はずっと七海の顔を見ていた。


「どうしたの?」

七海が視線に気づいて聞くと、


「七ちゃんのヒゲ探してた。」と答える。


「あーもう最低!あんた達出禁!」


「…でもよ、七海、ホルモン注射って50代か60代まで打ち続けんじゃん?ほっといたらやっぱ髭生えんの?胸ちっちゃくなったり。」


「…かけ!見なくていい!これは、入ってんの!」

翔に胸を見られて七海が手で隠す。


「うん。でも気になる。」

「…かけは、女性ホルモン打ったり、お薬飲んだりしたい?」

「…うーん。今まではなかったんだけどね、七ちゃん見てたら羨ましいなとは思う。でも、肝機能落ちたり、メンタル沈みやすかったり、体力落ちたりするって考えたら…うーん。。下手に手は出せないかな。途中でやめるわけにもいかないしさ。」


「自由診療でやるなら、診断さえ出ちゃえばできるからさ。定期的に検査は必要だけどね?途中でやめたければやめてもいい。そういう人もいるから。体が変化するに連れて『ちょっと違う?』とか、『ここまではいいかな?』とかって感じて辞める人はいるよ。」

「お金は?高いの?」

「3000円前後。病院にもよりけりだね。」


「稜太。」

「うん?」

「…僕、胸あった方がいい?」

「……。」

「見すぎ。」


僕らのやり取りを見て七海が笑う。


「あんた達本当に似てる。ひとの胸見る目が同じ。」


「かけちゃん。にてるって。」

「似てるって」


「それ。その顔。」

「なに?」


クスッと笑う稜太の顔が本当に可愛い。


「七海、これ見て。こいつの顔。こんな可愛いのに人の上に乗ると羽生やしたエロ天使になるんだからさ。ギャップヤバすぎ。」


「かけちゃん昔からそうだよね。たまに男っぽい顔するよね。ボーッとしてる時とか、考え事してる時とか。」

「そう?意識してない。」

「それがいいんだよ。ね。七海。」

「そう。かけちゃんはそれでいいの。」


「……。」


僕がニヤつきながら翔を見る。


「なに。」

「いや?」

「なに。」

「チューする?」

「…バカじゃないの?」

「どうぞ?見ててあげる。」


僕に言われて顔を赤くする翔に七海が意地悪に煽る。


「…本当にお前は可愛いな。」

「ねぇ、かけちゃんはいくつになっても可愛いよね。」

「恥ずかしいから。そんなに言われると。」


僕はそんな翔を抱き寄せた。


「七海の前だけだぞ。俺が素直になるのは。」

「…?」

「お前が好き。愛してる。」


「ほらね?翔。稜太を信じていいから。稜太はこういうやつだから。」

「七海、ここでしていい?3人でもいいぞ。」


「帰れ。私はお断りする。」

「じゃあ七海さん、俺とふたりでどう?」

「バカじゃないの。私の扱い方わかるの?」

「……出したあとどうすればいいの?洗ってあげればいい?」

「……そこまで言うやつさすがにいなかったわ。」


七海が僕の顔を見て唖然とする。


「いや、だって、ねぇ。作りがわかんないからさ。なんとなくは知ってるよ?でも、洗い流した方がいいのかなとか。」

「確かに…。似た形とは言え、中はどうなってるかわかんないもんね。」

と翔。


「洗ったりはするね。」

「まぁそうだよね。そこで溜まっちゃったりとかあるのかな。」

「匂いとかも気になるしね。」

「……?」

「あれだ。翔。腸の一部使うからさ。」

「そうなんだ。…痛そう。」

「七海、痛いの?」

「手術仕立てはねなんでもいたいよ。」

「なるほどね…。まぁ切るしね。くっつけるしね。」

「そう。」

「……稜太」

「うん?」

「僕の邪魔?」

「別に。」

「邪魔ならかけちゃんと居ない。いちいち考えないの。そういうこと。稜太はあんたが良くてそうやって人前でもくっついてんだからさ。」

「そうだよ。お前がしたいならすればいい。したいようにすればいい。」


「……うーん。僕は僕のままがいい。稜太が好きでいてくれるならそれでいい。」

「別に俺は女になれとか言わねーし。七海はなりたくて…?違うな。」

「うん。七ちゃんは完全に女の子だったよ。僕なんかより何倍も。結局僕はそこまで求めてなかったから。でも七ちゃんは、胸がある体の方がしっくりきて下もない状態がよかったんだよね。」

「そう。そういう所を理解してくれる人が少ないんだよねー。」

「俺らは分かってる」

「そう。僕らは大丈夫。…そうだ。」



「うん?」

「稜太はさ、『女の子になりたい』とか思った事ない?」

「ない!」

「本当に?…」

「ないな。」

「でも僕に乗られてる稜太は本当に可愛い。」

「うるせ!」


「どんな風に可愛いの?」

意地悪に七海が聞く。


「うーんとね。」

「言わなくていい」

「えー知りたいな。…どんな感じ?翔のそういう時は?」

「……」

「赤くなってる。確かにこれは可愛い!」


七海が僕を抱き寄せた。


「稜太、どうする?私と試してみる?」

「結構です。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る