第8話 腕の中

──────夢の中。


「おじさん誰?」

「お、おじさん?」

「うん。」


可愛い顔した女の子みたいな子にそう声をかけられた。


「さ、さぁ、誰だろうね。誰でもいーじゃん。」

「…悪い人ではなさそうだね。」


その子は耳に髪をかけて笑った。


「今お前、何歳なの?」

「うん?12歳だよ。小学校6年生。」

「そっか…可愛いな…」

「変な目で僕の事見てる?」

「はぁ?なんでそうなんの。」

「たまにいるんだよね。おじさんで僕を変な目で見る人。」


「危なくなったら呼べ。警察突き出してやるから。」

「いつでも来てくれるの?」

「いくよ。」


僕は…体が先に動いていた。


「…稜太?」

「え?」

「僕の友達と同じ匂いする。」

「そうか?」

「…あったかい。」

「翔…」


僕は…翔を抱き寄せたあと自然に唇を重ねていた。

翔はもう既に可愛いのにどこか妖艶で惹き込まれるような感じがした。


「…かけ、していい?」

「…僕まだ小学生だよ。」


直後僕は誰かに後ろに引っ張られた。



「ロリコンだかショタだか知らないけど、犯罪者にはならないでよ。」


振り返るとそこに翔が居た。


「なんだよ。遊んでただけなのに。」

「……僕だったら何歳でもいいの?」

「いや、そのこれは、その。。お前があまりに可愛くて。つい。」

「ついでそんなにしてるわけ?」

「…ごめん。」


「……。」

翔が僕を引き寄せてキスした。


「…僕ね、本当はもうあの時には稜太が好きだった。いっつもなんかあったら抱きしめてくれてた。でもあの時は僕だけだったんだよね…。キスしたいなとか、抱きしめて欲しいなとかおもってたの。」


「……我慢してただけ。お前に嫌われたくなくて。」

「え?」

「お前があの頃って俺中2じゃん?したくてたまんなかったわけよ。けどそれがただの欲なのかお前への欲なのかわかんなくて我慢してた。」

「別にしても良かったのに。」

「怖かったから。」

「なにが?」

「勘違いしてお前に嫌われるのも、自分自身が、可愛いくてどうにかしたいけど、目の前にいるやつは男だって現実があったから。でも、『男』って思いきれなくて、なんかどちらでもない本当に可愛い生き物に見えてた。」


「……抵抗はあるよね。でも実際僕も自分を型にはめなきゃってしんどかった。」

「…俺、本当は今でもお前の事『男』って思ってなかったりする。二分化出来るような奴じゃないから。」

「それでいいよ。僕もどちらかというと、『男』『女』っていうより『僕』っていう立ち位置だから。別に今の体が嫌とかでもないし。」

「……そんな可愛いのに襲いかかってくるのはなんでなんだろうな。」

「うん?稜太が可愛く見えるから。止まらなくなる。」


「……。」

「ほら、それ。一瞬なんかのタイミングで見せるその欲しそうな目。これが僕を豹変させるの。」

「俺そんな目してる?」

「…じゃあ今何思ってる?」

「…。」

「あはは。ほら、ね?図星でしょ?顔まで真っ赤になってる。」


次の瞬間、僕は翔に抱き寄せられた。


「……いいの。僕の前では素直でいて。僕がこうやって包み込んであげるから。。稜太が昔してくれたみたいに。だから僕には隠し事しないで。」


「…かけ。」

「うん?なに?…」

「キスして…」

「…可愛いんだから。」


僕は細長い腕と優しい匂いに抱かれていた。

でもどこか気に食わなかった。けどその反面、安心感で満たされていた。


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