十二人の少年少女たち

藤田 蛇暉

第1話 出会い

 「あ~。暇だ。」

ここは、ある一軒家。ここに、十二人の少年少女たちが住んでいた。

ここは、静かで贅沢とまではいかないが、それほどの生活を送っていた。

「おい!お前ら~集合~!」

下の階から声が響いた。

「何だ?」

「あっ。おはよ~。」

「おはよ~。」

もう昼だというのに、まだ寝ていた者たちが起きてきた。

「全員そろったか?」

長男の村紗 茂夫紫むらさ もふしが、聞いた。(もふくんと呼ばれているので、もふくんとする。)

「そ~だよ~。」

あくびをしながら、三男の青木 黒雷あおき こくらいが答えた。

「で?なんですか?」

九男の、城田 浩が聞いた。

「みんなさ~最近部屋狭いと思わない?」

村紗が聞いた。

「確かに」

「最近狭いよね~。」

「そうそう。クッキー作る道具も置けなくて。」

端のほうでわいわい話しているのは、長女の松本 絵都まつもと えとと、次女の野木 のぎ さくら、三女の水谷 流奈みずたに るなである。

「で?それがどうしたんですか?もふ兄。」

そう聞いたのは、八男の白石 狐毒しらいし こどくである。

「ふっふっふ。聞いて驚くなよ。」

「「「「「「「「「「「うん。」」」」」」」」」」」

「なんと……」

「「「「「「「「「「「うん。」」」」」」」」」」」

「今回……」

全員が、息をのんだ。

「今回。宝くじの一等が当たり、十億円が当たりました~~~~~!」

「えっ?」

「十億……?」

「まじ?」

「うん。」

「「「「「「「「「「「はあ?!」」」」」」」」」」」

「えっマジかよ。ということは……」

青木が聞いた。

「ああ。そうやん。」

五男の黄田 龍也おうた たつやが答えた。(以下、たっつんとする。)

「あの大豪邸が買える!」

「「「「「「「「「「「やったー!」」」」」」」」」」」

全員が大声を上げて喜んだ。

それもそのはず。今この十二人が住んでいるのは、あるボロアパートの二部屋なのだ。

「さすがに狭かったな~。」

次男の、犬神 莉赤いぬがみ りせきがつぶやいた。

「そ~だったね~。」

「あっ。なお兄おはよ~。」

「なお兄っていつも起きるの遅いよな。」

「えっ!そうかな~。」

起きるのが遅いといわれていた、なお兄こと、四男の山本 直樹やまもと なおきが答えた。

「確かに部屋狭かったよな~。」

「いや。なお兄の場所だけマジで、土まみれだからね。」

「そ~お~?」

「「「「「「「いや。そうだよ!」」」」」」」

「まっとりあえず。何円だっけ。あの豪邸。」

六男の太治 たじ かけるが聞いた。

「一億。」

青木が答えた。

「ということは残り……。」

「九億。」

「どうすんの?」

黄田が聞いた。

「女子四億、男子五億って分けるのどうかな。」

山本が聞いた。

「う~ん。でも平等じゃないよね。」

村紗が答えた。

「よくね?」

「はあ~。直樹はさ、なんで平等じゃなくてもいいと思っているの?確かにこの世の中は、理不尽だよ?でもね?平等にしなくちゃいけない時もあるんだよ?特に僕たちは。わかるよね?みんな。だ。」

全員が軽くうなずいた。

「僕たちが一つになった時から、ようやく活気あふれた人間になったんだよね。」

「……。ごめん兄ちゃん。間違っていたのは、僕のほうだ。」

「うん。」

「じゃあどうするの?」

城田が聞いた。

「女子四億五千万。男子四億五千万。これで平等だよね。」

「うん。」

「じゃあこれで行くか。」

青木が答えた。

そして、大金を持って家を買いに向かった。

その家は、都会のど真ん中にあった。広さはおよそ百坪はある、広大な土地である。

この家は、もともとある資産家が持っていた家だったが、その資産家が他界。遺族が、その家を売ったが、何しろとても大きく、値段が高かったので、誰も買わず、最初は十億だったのが、二十年後の今は一億まで値下げされた。


「兄ちゃんまだ~?」

聞いたのは、七男の緑田 シヴァ《りょくた シヴァ》だった。彼はもともと体力が少ない。

「そ~だよ~。まだ~?」

最初は意気揚々と先頭を歩いていたが、今は最後尾で城田の肩を借りている黄田が言った。彼も体力が少ない。

「もう少しってところかな。」

村紗が言った。

「ところで、兄ちゃん。」

青木が聞いた。

「なに?黒雷。」

「いや……。行く前に少し調べたんだ。」

「うん。」

「そしたら……。」

「……。」

「そこって事故物件なの?」

「えっ!?」

犬神が振り向いて言った。

「……。そうかもね。」

「なんで?」

「何回か、その家に住んだ人がいたけど、全員が謎の死を遂げている。」

その言葉にすぐに反応したのは、太治だった。

「えっ!いやだよ!そんなとこ!俺らも死ぬかもじゃん!」

「安心して。翔。」

なだめるように、村紗が言った。

「そのあと、不審死のわけはわかったんだ。」

「なんなの?」

「ハウスダストと、アスベストだったんだ。」

「え……」

「今は、もう取り除かれている。だけど、前の持ち主が行方不明になったことはまだ解明されていない。」

「………解き明かしてみたいな~。」

今まで、音楽を聴きながら歩いていた白石がつぶやいた。

「いいねそれ!」

「やってみたい!」

「面白いかもな。」

全員がその意見に賛同した。

「よし!なら、豪邸についたら、まず間取りを確認して、それぞれの部屋を決めよう。探すのはそれからだ!」

村紗が右手を掲げながら叫んだ。

「「「「「「「「「「「おお~~~!!!!!」」」」」」」」」」」

全員が声をあげた。

そして、十五分後…………

「あっ!あれじゃない?」

山本が指さして言った。

「うん。あれだよ。僕たちがこれから住む豪邸。」

村紗が答えた。

「なんか・・・・・。」

「すごいね・・・・・。」

「住宅地のど真ん中にあるもんな。」

「威圧感があるな………」

「よし!行こうか。」

村紗が言った。

「うん。」

「そうだな。」

そして、少しして……。

「よし!ついたな。」

「早く入ろうや!」

黄田が言った。

「そうだな。」

「行こうか!」

全員が入ろうとしているのを、最後尾でぼーっとしながら眺めていた一人の男がいた。

「おい。早く行こうぜ。」

「……っあぁ。今行く。」

彼は、少し乗り気じゃない様子で言った。

その後、豪邸を軽く見渡した結果、ここには三つの寮があることが分かった。

そして、三つに分けることにした結果次のように決まった。


文化寮  村紗 茂夫紫

     太治 翔

     犬神 莉赤

     城田 浩

筋肉寮  黄田 龍也

     山本 直樹

     青木 黒雷

     緑田 シヴァ

     白石 狐毒

女子寮  松本 絵都

     野木 桜

     水谷 流奈


そして、この豪邸には温室や池、和室、茶室、噴水があった。そして、この世に一個しかない伝説のカドケシも……。

部屋割りが決まったのち、寮ごとに分かれて買い物をしに行くことにした。

全員で行ったのは、近くのスーパーマーケットだった。

「ここからは、寮ごとに分かれる。今が……何時だ?」

村紗が全員に聞いた。

「十一時。」

山本が答えた。

「ということは、ここから、家まで何時間かかる?」

「最低でも一時間。」

「ネットで調べたけど、最長で、五時間十五分かかるらしい。」

白石が言った。

「荷物はどうすんの?」

黄田が聞いた。

「ダイジョーブ。俺は免許もあるし、トラックを借りることもできるらしいんだ。この店。」

「へ~。」

「便利だね~。」

城田がつぶやいた。

「まあということで、四時には、もう一度ここに集まろうか。」

「OK」

そして、そのあとみんなで分かれ、各々好きなものを買いに行った。


―――そして、五時間後―――


最初に集まった喫茶店に最初についたのは、文化寮だった。三時四十五分のことだった。

そのあと徐々にに集まっていった。二番目についたのは、女子寮だった。三時五十五分のことだった。

そして、最後についたのは運動寮だったがその中に、山本の姿はなかった。そして、緑田の姿も……。

そして、四時三十分ようやく二人がついた。ついた時の二人の表情は驚いていた。

「お誕生日おめでとう~!シヴァ、なお兄!」

そう、今日は、山本と緑田の誕生日だったのだ。

「み………皆……。」

二人は、今でも泣きそうな声で言った。

「ありがど~~~!!!」

最終的には、二人は大号泣していた。

「おいおい。鳴くのはそれぐらいにして、このケーキ食べようぜ?ここの店員さんにも手伝ってもらったんだから。」

村紗は、ちらっと厨房のほうを見た。その視線にきずいた一人の店員がうすら笑いを浮かべた。

「ぞうだな。ばやくたべよう。」

「まだ泣いてんのかよ。泣きすぎやろ。」

黄田がつっこんだ。

そして、そのあと三十分間。十二人で、楽しいひと時を暮らした。

そして、帰路についたのは午後五時のことだった。家に着いたのは、夜の六時だった。

「はー。疲れた~~~~~。」

太治が、大広間にあったソファに倒れこんだ。

「ほんとにね。だいぶ疲れた~。」

松本が言った。

「でも、家具が届くの明日だろ?」

「うん。」

「じゃあ今日は寝袋か~。」

「そうだね~。でも仕方がないよね。」

犬神と村紗が話していた。

「そういや、莉赤兄ちゃんって免許持ってたっけ?」

「一応あるよ。でも、そんなに乗ってないからな~。」

「とったんいつやったけ?」

「今、二十一だから……とって半年。」

「ほうやんやな~。」

黄田が犬神と話していた。

「もふ兄。」

「どうした?」

白石が村紗に聞いた。

「今日の晩御飯は、どうするの?」

「「「「「「「「「「「あっ…………」」」」」」」」」」」

「晩御飯・・・」

「「「「「「「「「「「あ~~~~!」」」」」」」」」」」

「考えていなかった!」

「どうしよう!」

「黒雷!ちょっと調べて!」

「待ってて、もふ兄。えっと……。」

「どうだった?」

「あるにはあるけど……。」

「けど・・・・?」

「激辛専門店か、居酒屋。」

「「「「「「「「「「「…………。」」」」」」」」」」」

「もうおしまいだ~~~!」

「せっかく誕生日だっだのに~~~!」

「もふ兄。」

「なに?浩君。」

「ん。」

城田は、無造作にバックを突き出した。

「ん?なにこれ?」

「お湯はあるだろ。」

「あるよ。」

「中身見て。今渡したバックの。」

「何が入っているんだろう……?」

全員が、のぞきながらバックを見ると…‥。

「っこ。これって……。」

「非常食・・・・」

「絶対忘れてそうだったから。」

城田が本を読みながら答えた。

「「「「「「「「「「「あっ……。」」」」」」」」」」」

全員が城田のほうを向いた。

「えっ?もしかして……。」

「「「「「「「「「「「ありがど~~~!!!」」」」」」」」」」」

全員が城田にとびかかった。

「うわっ!ちょっとやめてよ。もふ兄!莉赤兄!なお兄も!」

「ありがど~~~!!!」

「ぼんどにがんじゃずるよ~~!」

「ボンドに感謝ってなんだよ!」

城田が、犬神にツッコんだ。

「うわっ!もう早く離れて!うわ!桜姉さん!鼻水がついたよ!」

「だっで~~!」

「あ~もう!さっさと作ってよ!もふ兄!」

城田の抵抗もむなしく、この騒動はあと三十分続きましたとさ。

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十二人の少年少女たち 藤田 蛇暉 @fujita_jaki

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