第66話 食い逃げ犯_その後

「洋一さん、良いんですか?風間君に支払い押し付けて。」

「いいんだいいんだ。もう会うこともないんだし、中学生だろ?もっとお金に余裕のある人を相手に仕事したいもんだよ。」


「でもお嬢と同じ学校に通ってるんだから、親は金持ちなんじゃないですか?」

「なんだって!脂元くん、それを早く言いたまえ!今すぐ戻ろう!」

「もう遅いですよ。それにあんなに挑発的な熊の絵なんか描いて。きっと今頃激怒してますよ。中学生の男子なんですから。謝ったって許してくれないですよ。」


「そうだな。だが希美くんの通ってる学校の関係者は要注意だということが分かったよ。なんて学校だっけ?」

「天才学園です。」

「天才学園?なんか天才じゃない人が考えそうな名前の学校だね。」


「それより、砂糖元家から何かもらえそうな仕事とかないのかい?希美くんの好きなものとかあったら、僕は何日だって並んで手に入れるぞ?」

「うーん、お嬢が好きなのは戦国武将とかですかね?」

「戦国武将か、何かフィギュアとか手に入れたら100万円くらいくれないかね?」


「そんな馬鹿な話ないですよ。」

「そうか、いや実はね。この前の大食い娘の件だけど、あれ報酬が20万円だったんだよ。砂糖元家だったら金は腐るほどあるだろうから100万円くらい私にとっての1000円くらいなんじゃないのかい?」

「うーん、たぶん1円じゃないですか?」


「え?1円?」

「砂糖元家にとっての100万円が。」

「脂元くん、自分で卑下して言った額の下をいかないでくれ。僕だったら1円でフィギュアもらえるなら喜んで払うよ、そうだろ?」

「お金の使い方とお金を持ってる量は関係ないんだな。」


「希美くんのお金で買えない欲しいもの聞いといてくれよ。」

「うちのお嬢からの依頼は諦めてくださいよ。自分の欲しいものは自分で手に入れるタイプですから。」

「確かに、そういう人だね。自分にも他人にも厳しいタイプだった、彼女は。」


「だけど、最近よくうちの事務所に来て幸子くんと話してるんだよなぁ。週に3回は来てるよ。幸子くんがいないと分かると無言で帰ってくんだ。わたしの事務所だぞ?まったく。」

「だったら、事務所に入るのにお金取れば良いんじゃないですか?」


「なるほど!でもそれだと他のお客さんからも取ることになってしまうじゃないか。」

「依頼がない人からだけお金取って、依頼がある人からは取らないようにすれば良いじゃないですか?そしたら幸子さんと話したいお嬢は何か依頼をしてくるんじゃないですか?」


「脂元くん、君は腹しか良いとこがないと思っていたが、意外と頭も良いじゃないか!よし、そうしよう!」

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