第64話 なまず屋再び
「まぁまぁ、2人とも。とりあえずラーメン食べに行きませんか?」
「脂元くん、そうやって君はまた僕にたかろうとしてるんじゃないだろうね?最近のラーメンは1000円を超えるものが多くなってる。僕は奢らないぞ。」
「洋一さん、僕思い出したんですよ。この前の仕事で行った定食屋の無料券があったの。だから僕の分は大丈夫なんで。」
「なるほど、確かにそうだったね。ならとりあえずなまず屋で腹ごしらえしていくか。腹が減っては戦ができぬ、ってね。鈴兵君もそれで良いだろう?」
「まぁいいですよ。なまず屋の定食は僕も好きですからね。あそこは貂彩学園の生徒証を見せれば定食に小鉢追加か大盛り無料ですからね。」
「ななんんだだっってて!!??」
一行は電車に乗ってなまず屋へと向かう。
なまず屋は三十路川沿いに店を構える定食屋である。
「今日は大食いバトルはなしにして、ゆっくり食べよう。」
「え?なまず屋の大食いバトル挑戦したんですか?あそこはまだ勝てた人が数人しかいないって有名ですからね。勝負はどうだったんですか?」
「なんだ知っていたのか。もちろん脂元くんの大勝利だよ。」
「すごい、あののどかに勝ったのか。」
「鈴兵君は、あの看板娘と知り合いだったのかい?」
「ええ、クラスは違いますけど同じ貂彩学園の1年生ですから。入学早々大食い部のエースになったって有名ですよ。」
「大食い部?そんな部活があるのかい?」
「貂彩学園は部活が多いですからね。特に大食い部はSNSでも有名で、全国各地の店舗とコラボしたり、大食い娘も発祥は貂彩学園の大食い部ですからね。」
「そうなのか。じゃあ希美くんの力を借りればブロマイドを譲ってもらえたかもしれないなぁ、脂元くん?」
「いや、お嬢はそういうの嫌いですから、自分の力でとってきなさいって言うと思いますよ。」
「僕から頼んでもかい?」
「はい、洋一さんからならなおさらです。」
「確かに、探偵の底辺って言ってましたもんね。」
「君たちはもう少し包み隠すことを覚えるべきだと思うよ。底辺の意見として言わせてもらうとね。」
そうこうしているうちになまず屋に到着した。
ガラガラッ!
「いらっしゃい。」
なまず屋に入るとお父さんが迎えてくれた。
「あ、脂元さんと風間くん。それに、、いらっしゃいませ~。」
「どうも、この前大食いバトルに挑戦しました、探偵の山葵山と言います。はい、山葵山。」
「そう、山葵山さんだ。今日もバトルするんですか?」
「いや、山葵山は今日は普通に食べに来ました。」
「そうなんですね~。こちらの席にどうぞ~。」
案内された席に座るやいなや、山葵山はメニューをパラパラとめくる。
そして、メニューを決めたのか2人にメニューを渡す。
『大きな』執事もパラパラとメニューをめくると、これまた素早く決めたのか鈴兵に渡す。
そして、鈴兵がメニューを開く前にピシッと手を上げた。
「すみません、この定食無料券で特別定食を下さい。」
『大きな』執事は定食無料券を高くあげてなまず屋で一番高い定食を頼む。
「すみません、それを2つでお願いします。」
「洋一さん、どうしたんですか?いつもは一番安いのにするのに。」
いつもは『大きな』執事の軽口には反抗して騒ぎ立てるのに、静かに頷くだけの山葵山に不信感を抱くが、『大きな』執事は自分に害はないと判断し気にはとめない。
「風間くんは?」
「えっと、じゃあ日替わり定食で。」
いつもはおしゃべりが止まらない山葵山が、静かに定食が来るのを待っている。
これには鈴兵も違和感を感じたが、ザリガニの件で疲れていたので、鈴兵も静かに待っていた。
「お待たせしました~、まず日替わり定食ですね。特別定食はもう少々お待ちください。」
「ではすみません、お先に頂きます。」
山葵山は変わらず静かだが、『大きな』執事はじっと日替わり定食を見つめている。
「はい、こちら特別定食まず1つですね。」
のどかがどっちの机に置こうか考える間もなく『大きな』執事がのどかの手から奪い取る。
そして机に定食を置くやいなや米を頬張る。
山葵山の特別定食が来ても、皆が無言で食べ続ける。
鈴兵は皆も疲れてるんだと思って、ただただ日替わり定食を掻き込む。
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