第60話 いざ捜索へ

「山葵山さん、こんな立派なザリガニをありがとう。猿次も喜ぶわ。」

「いやいや、こんなもの朝飯前ですよ。」

「ほんとありがとうね。お礼なんだけど、こんなので悪いわね。」

「いえいえ、僕はガリガリ棒が大好きなんですよ。ありがとうございます。」


山葵山はそう言うと、ガリガリ棒のパーティーセットを受け取る。

後ろから邪気を感じた山葵山は、咄嗟にリュックサックの中にガリガリ棒をしまう。

「では、我々はこれから重要かつ重大な任務があるので、失礼します。」


三十路川駅に行く道すがら、

「脂元くん、君はもう帰っても良いんだぞ。頼むから僕の後ろを歩かないでもらえるかな?」

『大きな』執事は、ガリガリ棒が入ったリュックサックから目を話すことなく、ついて行っている。

「ひどいな、洋一さん。まだザリガニを捕まえた褒美がないじゃないですか。それがないと帰れません。」

「君は何もしてないだろう!褒美といったってなぁ。」


「そうだ、指名手配犯を捕まえたら懸賞金が出るだろう。そこから褒美を渡そうじゃないか。だからもうちょっと待ってくれ。」

指名手配犯捜索隊の一行は、三十路川駅に到着した。

「ちょっと待ってくれ。NORUMOにチャージしてくる。脂元くん、君はどうせ切符だろう?交通費は出せないぞ。」

「ふっ、洋一さん。僕がいつまでも切符だと思わないでください。この前之弥さんに2万円チャージされたNORUMO をもらったんですよ。」

「なんだって!?2万円と言ったら最大限度の額じゃないか。」

「そうなんですよ。洋一さんはどうせ1000円しかチャージしたことないでしょう?」


「失礼な!この前法事で実家に帰るときに2000円チャージしたんだぞ。」

「それでも僕の10分の1じゃないですか。」

「それは君のじゃなくて砂糖元さんのお金だろう!まぁいい。鈴兵君もチャージはしなくて大丈夫かい?」


「はい、僕はスマートフォンに入れてるので、2000円より少なくなったらオートチャージされるようになってるので。」

「スマートフォン?オートチャージ?」

「はい、2人ともスマホは持ってないんですか?」

「脂元くんは、携帯すら持ってない。僕はこの折り畳みの携帯があるからスマートフォンなんて必要ないさ。それにこの折りたたむ時のパタン、という感覚から離れられなくてね。」


「今の時代スマートフォンがないと不便じゃないですか?それにだいぶ前から海外のメーカーが2つ折りのスマートフォン出してるから、それなら良いんじゃないですか?」

「なんだって?ついに私もスマホデビューしちゃうのか?それはいくらで買えるんだい?」

「詳しくは知らないですけど、確か12,3万とかで買えたと思いますよ。」


「じゅ、10万円!?それはお話にならない。そんなお金は払えない。」

「一括で払わなくても、だいたいの人は月に2000円くらいの分割で支払いしてますよ。」

「分割だって?それは手数料がかかるだろう?お話にならないね。」

「いや、手数料もかからないんですよ。」

「なんだって?そんなうまい話があるわけないじゃないか。とにかく分割でも10万を超えるものは結構だ。」


「だったら今使ってる携帯会社から他社に乗り換えると、安い機種ですけどほとんど無料でもらえたりするキャンペーンもやってたりしますよ。」

「なんだって!?それもお話にならない。無料程怖いものはないと、鰤岡さんちの奥さんから言われていてね。」

「鰤岡って、3組の鰤岡茉凛のお母さん?鈴川のお母さんもそうだけど、世間は狭いですね。」


「そうだ、指名手配犯の懸賞金がもらえたら、スマートフォンを買おうじゃないか。一括で。」

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