第42話 杜子春4

ー「いかにもおれは峨眉山にすんでいる、鉄冠子という仙人だ。はじめおまえの顔を見たとき、どこかものわかりがよさそうだったから、二度まで大金持ちにしてやったのだが、それほど仙人になりたければ、おれの弟子にとりたててやろう。」と、こころよく願いをいれてくれました。ー


「こいつ、火影と仙人の二刀流なのか!?」

「秋冬君、この人は火影ではないわ。」

「俺の杜子春に仙人の素質があったから、助けてたのか。おかしいと思ったんだ。あんなに優しくするなんて。」

「あなたはすぐ人を自分のものにしちゃうんだから。」


ー杜子春はよろこんだの、よろこばないのではありません。老人のことばがまだおわらないうちに、かれは大地にひたいをつけて、たんども鉄冠子におじぎをしました。

「いや、そうお礼などいってもらうまい。いくらおれの弟子にしたところで、りっぱな仙人になれるかなれないかは、おまえしだいできまることだからな。ーが、ともかくもまずおれとしっしょに、峨眉山の奥にきてみるがいい。おお、さいわい、ここに竹づえが一本落ちている。ではさっそくこれへ乗って、ひと飛びに空をわたるとしよう。」ー


「おいおい、仙人って魔法使いなのか?マルフォイみたいに箒で空を飛べるのかよ!」

「それを言うならマーカス・フリントみたいに、でしょ?」

「誰だ?そいつは?」

「知らないの?クィディッチのスリザリンチームのキャプテンでチェイサーだったフリント家の男の子よ。」

「あぁ、ニンバス2001をもらって喜んでたあいつか。」


ー二人を乗せた青竹は、まもなく峨眉山へ舞い下がりました。

 ー中略ー

二人がこの岩の上にくると、鉄冠子は杜子春を絶壁の下にすわらせて、

「おれはこれから天上へいって、西王母にお目にかかってくるから、おまえはそのあいだここにすわって、おれの帰るのをまっているがいい。たぶんおれがいなくなると、いろいろな魔性があらわれて、おまえをたぶらかそうとするだろうが、たといどんなことが起ころうとも、けっして声をだすのではないぞ。もしひと言でも口をきいたら、おまえはとうてい仙人にはなれないものだとかくごしろ。いいか。天地がさけても、だまっているのだぞ。」といいました。

「だいじょうぶです。けっして声なぞはだしはしません。命がなくなっても、だまっています。」

「そうか、それを聞いて、おれも安心した。ではおれはいってくるから。」ー


「黙ってるだけなんて楽勝じゃん!俺でもできるぜ。」

「たぶんあなたは、いつか気が抜けて声だすから無理ね。」

「そんなことより、ずっと気になってたんだけど。このおっさん仙人なんだよな?なのにずっと自分のことおれって言ってて、おれじゃなくて、わし、だろ?普通の仙人だったらそういうだろ。」

「それはあなたの思い込みだわ。自分のことくらい好きに呼ばせてあげましょう。それに普通の仙人ってなによ。他に仙人見たことあるの?」


ー杜子春はたった一人、岩の上にすわったまま、しずかに星をながめていました。するとかれこれ半時ばかりたって、深山の夜気がはだ寒くうすいきものにとおりだしたころ、とつぜん空中に声があって、

「そこにいるのは何者だ。」と、しかりつけるではありませんか。ー


「半時って何秒だ?」

「一時が2時間だから半時は1時間よ。ちなみに四半時が30分ね。」

「なんで一時が2時間なんだ?」

「昔は干支の十二支で時間を表していたの。子が0時の前後一時間、つまり午後11時から午前1時の二時間のことを表して、丑が午前1時から3時という風に。午前午後もここからきていて、午の刻が午前11時から午後1時で午の前と後で午前と午後。」

「へぇーそうなのか。おまえなんでも知ってるな!」


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