第30話 トップ3人衆
「まぁ、トップと言えばトップかもな。」
そう言いながら雲龍は、パソコンの画面をモニターへと映した。
「このグラフが何のグラフか分かるか?」
雲龍が映したのは、3つのグラフで各グラフにはそれぞれ3つの折れ線と1つの縦棒が記載されている。
3つのグラフはだいたい似通っている。
3つの折れ線は、1つは一番上の100の値を横一線に走っている。
2つ目はこれぞ折れ線と言わんばかりに60近辺を上下しながらホップしている。
そして3つ目の折れ線は、微妙に上下しながら底辺を匍匐前進している。
縦棒は3つ目のグラフとほぼ沿っている。
桜児はこのグラフが何を表しているのかちんぷんかんぷんだった。
「先生、これはなんのグラフなんですか?全然分かんないっす。」
ーふっふっふ。
桜児の後ろで、堂前紫苑が偉そうにかつ聞こえるように笑みを投げている。
「なんだよ、お前分かんのか?」
桜児は少しむっとして紫苑を振り返る。
「分からないのかい?僕たちはクラスのトップとしてここに集められているんだよ?これは人の上に立つために必要なもののランキングだよ。一番上のやつが僕たちの線だr」
「これって!」
紫苑の偉そうな声を、一番前に座る日比野忠臣の声が遮った。
「これって1学期の成績ではないですか?一番右のグラフの中の棒グラフの数字、僕のテストの結果と同じ数字になってます!」
桜児と紫苑があっけに取られている横で、雲龍が頷く。
「その通り、良く分かったな日比野。」
雲龍は先ほどのグラフの抜けていた各項目の説明が記載されたスライドに切り替えて説明をする。
「これは折れ線が上から各教科の最高得点、平均得点、最低得点となっている。
そして縦棒が日比野の言う通り、お前たちの点数となっている。分かるか?お前たちの得点はクラスの最低得点とほとんど一緒なんだ。」
桜児はとても恥ずかしくなった。
しかしそれは自分がクラスで一番成績が悪いことではなく、先ほど自分たちはクラスのトップであると豪語していた堂前紫苑が、言葉も出ないほどに現実を受け入れられていない様子を見て恥ずかしくなっていた。
そんな紫苑の様子は気にも留めず、雲龍は続ける。
「こんな事態は、この学園が設立されてから初めてらしくてな。毎年お前らみたいなのは学年にいるが、だいたい1人だ。だが今年は3人も出てきた。この学園はテストの成績はあまり重視していないが、限度ってもんがある。そこでお前たちには基本教科である英語、数学、国語、技術の追試を受けてもらう。そのために、各教科で60点以上取っている生徒に勉強を教えてもらってこい。60点以上であれば誰でも良い。教えてくれる人が見つかったら職員室まで来てくれ。」
そう言い終えると、雲龍はパソコンを閉じた。
「何か質問は?」
「はい!」
桜児はピンと腕を挙げて雲龍に問う。
「教えてくれる人を探せって、俺らに教えてくれる人なんているのか?メリットがねぇじゃんよ?」
そう問われた雲龍は、すまん言い忘れた、と申し訳なさそうに答える。
「お前らに教えてくれる人は、貂彩ポイントが結果に応じて付与される。ただ追試が41点未満だった場合はその限りではないが。」
「天才ポイント?なにそのダサいポイント?」
「天才ポイントではない、貂彩ポイントだ。入学式で説明があったろ?って、そうか。お前は聞いてなかったな。」
また入学式か、と桜児は最近蒸し返されることが多い羞恥事に嫌気がさした。
「貂彩ポイントとは、この貂彩学園内で使えるポイントのことで、学内の商品購入や飲食、施設利用等に使えるものだ。詳しくは朝鳥先生が資料持ってるから、もっかいもらってこい。」
はぁ~い、と桜児は興味を削がれて席に座る。
「とにかく、今週末までに教えてくれる人を報告するように。じゃあ解散。」
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