第29話 各クラスのトップ
「はい、では本日のHRはこれで終わりになります。皆さん今日もお疲れさまでした。ただ、秋冬くんは雲龍先生が呼んでいるので、映像室に行ってもらっても良いですか?」
「え?なんで俺だけ?しかも映像室って三階じゃん、めんどくさー。」
貂彩学園の校舎には、一階に中学生の教室があり、その他には職員室と印刷室、給湯室がある。
二階には高校生の教室と会議室があり、三階には技術室と資料室、ゲーム室と図画工作室がある。
そして三階の中央には映像室という、小さい映画館のような、大きなモニターがある部屋がある。
ただ、なんでわざわざ職員室ではなく映像室に?
桜児は、何か不穏な空気を感じながら階段で三階へと向かう。
三階に到着し、技術室と資料室の間の廊下を進み、扉を引いて映像室に入る。
すると、そこには雲龍の姿はなく、代わりに二人の生徒がいた。
「やぁ、君は確か秋冬君だったかな?入学式以来だね。」
そう話すのは、いかにもお坊ちゃまみたいないけ好かない男だ。
桜児が返答に困っていると、そのいけ好かない男は偉そうに続ける。
「いや、すまないね。僕は1組の堂前紫苑と言ってね。堂前グループのおんぞうしだ。そして、彼は3組の日比野ただおみ。どうも彼とは話がかみ合わなくてね。」
紫苑に紹介された男子は、桜児は見たこともなかった。
「日比野忠臣です。よろしくお願いします。」
「よ、よろしく。」
日比野忠臣は、大きく頭を下げて桜児に挨拶をした。
桜児は困惑していた。
二人とも話したこともないし、第一みんな違うクラスだ。
すぐ思いついたのはクラスの代表で集められたということだが、委員長なら鰹木結衣がいるし、成績なら砂糖元とか竹下薊とかであろう。
あとはうるさいやつが集められたのかと思っても、日比野忠臣は物静かな印象だ。
なんでこの三人が集められたんだ?
「秋冬くん、なんでこの三人が集められたか理解できないって顔をしているね?」
ふと見ると、紫苑が偉そうに笑みを浮かべながら偉そうにしている。
「僕が思うに、各クラスのトップの人間が集められたんだろう。」
「トップ?なんのトップなんだ?」
ーふっふっふ。
紫苑は偉そうにため笑いをしつつ、偉そうにしている。
「トップはトップだよ。上に立つもの。僕たちは貂彩学園を引っ張っていく存在ということで、特別に集められたのさ。」
桜児は、紫苑のことがとても羨ましくなった。
こうもポジティブに考えられる人を、桜児は他に知らなかった。
日比野忠臣はというと、我関せずに何やらノートをとっている。
彼は彼でとてもマイペースだ。
全くこの三人に共通点は見つからない。
へへっ、と桜児が愛想笑いで困っていると、ガラガラッっとドアが開いて、雲龍がノートパソコンを持ちながら入って来た。
「すまんな、呼び出して置いて遅れちまって。」
そう言いながら雲龍は、モニターの横に座ると、桜児達に適当に席にかけるように伝える。
「さて、悪いな。集まってもらって。まず、今日君たちが集められた理由は理解しているか?」
謝意の言葉から一変、雲龍の言葉に重みが増した。
そんなことは気にせず、紫苑は偉そうに笑いながら手を挙げて答える。
「先生、それはこの三人が各クラスのトップであるからでしょう?さっきもみんなでそう話していたんですよ。」
「クラスのトップ?」
そう思ってるのはお前だけだろ、と思いつつ、桜児もなぜ呼ばれているのか理解できていないので、ツッコむこともできない。
日比野忠臣は、背筋を伸ばして雲龍先生とノートを交互に見ている。
「まぁ、トップと言えばトップかもな。」
そう言いながら雲龍は、パソコンの画面をモニターへと映した。
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