第28話 図書館の秘密2

特別会員。

先程、間違って行ってしまった九階。

そこには重厚な扉があって、特別職員のカードがないと入れなかった。

一般の人が入れない、特別職員しか入れない。

『大きな』執事は、学生時代のことを思い出していた。


あそこには、この学園の秘密がある。

きっと一般人には食べられない食べ物があるに違いない。

『大きな』執事は、溢れ出る好奇心とよだれを押さえつつ、雲龍のカードキーを手に取り、一階のエレベーターへと向かっていた。


ぺぺんっ↑

エレベーターが到着し、周りを窺いながら九階へと向かう。

九階へと向かうエレベーターの中で、『大きな』執事は何があるのかを想像していた。


特別会員しか入れないということは、一般的なものや勉学に必要なものがあるわけじゃないだろう。

特別ということは、おそらく年会費とかが必要なもの。

それがいくらかは分からないが、貂彩学園の施設の特別会員なら、額も知れる。


おそらく高級料理店で修業したシェフが目の前でステーキを焼いてくれたりカレーを作ってくれたりするのだろう。

『大きな』執事は、ここが図書館であることを完全に忘れ、いや、彼にとって図書室・図書館は飲食するための場所であった。

ぺぺん。

九階に到着した。

『大きな』執事は、ポケットにフォークとスプーンがあるのを確認して、雲龍から拝借した特別会員のセキュリティカードを、扉の横にかざす。


ピー。ガチャ。

鍵が開いた音がした。しかし、『大きな』執事は自動で開くものだと思い込んでいたので、扉が開くのをじっと待っていた。

これだけ重厚な扉だから、開くのに時間がかかるのだろう。

ガチャ。

扉が閉まった。

『大きな』執事は、このタイミングで扉が自動ではないのかもしれないと思い始め、扉を手で空けようとする。

しかし、先ほど鍵が閉まったところなので、開くはずもない。


『大きな』執事はもう一度セキュリティカードをかざしてみる。

ピー。ガチャ。

よく聞けば、鍵が開いた音が聞こえた。

『大きな』執事は、扉の取っ手に手をかけ、扉を開ける。


しかし、そこには想像していたシェフもキッチンも飲食スペースも無い。

他の階と同じように、本が並んでいる。

棚の上には、日本やアメリカ等の国の名前が並んでいる。

さらには時代別にも分かれている。しかし、何の本が並んでいるんだろう。

『大きな』執事は、近くにあった日本エリアの本を適当に手に取って見てみる。


すると、そこには江戸時代であろう和服の人の絵が描いてある。

一気に興味を削がれた『大きな』執事は、本を閉じて元の場所へ戻し、他の本もパラパラとめくってみる。

しかし、他の本も同じようなのばかりだ。

『大きな』執事は、見る人が見れば貴重なものなんだろうと考え、そろそろ雲龍も戻ってくるだろうと、戻ろうとしたその時、絵をよく見るとある点に気づいた。


『これ、もしかして春画?』

よく見ると、和服が開けていて女性や男性のの恥部が描かれている。

ふと上を見やると、江戸時代と書かれている。

左を見ると、室町時代と書かれている。

右を見ると、明治・大正・昭和と続いている。


「まさか、」

『大きな』執事は、日本の現代のコーナーへと向かうと、見知っている雑誌を発見した。

中には実際に読んだこともある名前もあった。

ここは、世界のエロ本があるんだ。

『大きな』執事は急に好奇心が戻って来て、アメリカやヨーロッパのものが気になりだした。


ぎゅるぎゅる!

「大きな」執事の腹時計が鳴った。

「しまった、もうそんな時間か!」

『大きな』執事は腕時計はつけていないが、腹時計は優秀なものを持っている。

既に九階に来てから30分は経ってしまった。

セキュリティカードを勝手に持ち出したことがバレれば、報質食量協定に支障が出る。


『大きな』執事は、惜しみつつもエロ本を戻して三階の部屋に戻ることにした。

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