第27話 図書館の秘密1
貂彩学園の図書館は、生徒の家族・関係者は自由に利用することができる。
申請をすれば、入館するために必要なカードを受け取ることができる。
それを入口のフラッパーゲートにかざせば図書館に入場することができる。
勉学に必要な書籍はもちろん、大衆向けの小説や絵本もあることから、学生や教師の家族も多く利用している。
砂糖元家の『大きな』執事も、図書館にやってきていた。
希美から嫌々渡されたカードで、入場する。
ゲートはすんなり空いたが、質量的に通るのに苦労した。
『大きな』執事は、学生の頃を思い出していた。
『大きな』執事の通っていた学校は、図書館ではなく図書室であったが、1年生の頃はよく通っていた。
図書室は人が少なく、空調が効いていて夏は涼しく冬は暖かい。
『大きな』執事は、本など読むことなく、奥のテーブルで涼みながらよくご飯を食べていた。
おにぎりやパン、お弁当。時にはカレーまで。
当然図書室は飲食禁止。
『大きな』執事は奥の方でばれないように食べていたが、流石にカレーの匂いは隠せなかった。
程なく『大きな』執事は、図書室を出禁になった。
そう、『大きな』執事は1年生の1学期以降図書室には入れなかった。
そんなことを思いながら、『大きな』執事の目にふと、受付の前にある張り紙が映った。
『現在太宰治著.走れメロスに予約が殺到しております。現在予約を中止しており、閲覧を希望の方は図書室内でお読みになるようお願い申し上げます。現在追加の発注をしておりますので、ご理解ください。』
「なんだ?走れメロスって?そんなに人気なのか?」
そもそも走れメロスをしらない『大きな』執事は特に気にすることもなく、雲龍に指定された三階の会議室へと向かう。近くに階段しかなく、見なかったことにしてエレベーターを探す。
奥にエレベーターを見つけた『大きな』執事は、ボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。
ぺぺんっ↑
到着したエレベーターに乗って、三階のボタンを押そうとしたが、ボタンがどこにもない。
するとエレベーターの扉が閉まり、上へと上昇していく。
よく見ると、九階へ直通のエレベーターだったようだ。
ぺぺん。
九階に到着したエレベーターは、静かに開いた。
すると目の前には重厚な扉だけがあった。
扉の横には、セキュリティカードをかざす場所がある。
『大きな』執事は、持っているカードをかざしてみる。
”ビーッ、こちらの扉は、特別会員専用フロアです”
特別会員?この扉の奥には何があるんだ?
『大きな』執事は、とても気になったが、雲龍は遅刻にうるさい。
既に階下に行ってしまったエレベーターを呼び戻した。
ぺぺん↓
『大きな』執事は一階に戻ると、エスカレーターで三階へと向かった。
エスカレーターから降りると、そこには雲龍幸太郎がいた。
まさか、もう時間過ぎてしまったか?
『大きな』執事は、何もつけていない左手首を見た後、雲龍の顔を窺う。
「大丈夫、時間はまだ大丈夫だ。」
『大きな』執事の意図を察したのか、雲龍はそう言うと申し訳なさそうに加える。
「来てもらって申し訳ないが、ちょっと急ぎの用事ができたから、少し部屋で待っててもらっても良いか?すまんな。1時間くらいで戻る。」
雲龍は『大きな』執事の返答を待たずして、エスカレーターを降りて行った。
『大きな』執事はしかたなく、指定された部屋に入って待つことにした。
すると流石旧知の仲だけあって、部屋にはお菓子がいくつも用意されていた。
『大きな』執事は座るや否や、一つ目のお菓子を食べ終わった。
二つ目のお菓子に手を伸ばした時に、机に置いてあるリュックサックから滑り落ちている光り輝くセキュリティカードが目に入った。
お菓子をとるついでに、ふとカードの表面をみるとそこには、
'特別会員'
そう書いてあった。
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