第三話

さーて、先ずは、この森を抜けるか。」


クロはスラ吉と共に、森の中を歩く。

モンスターが出てくる気配はなく、さっき倒したゴブリンだけだった。


「何か出てくるとは思ったんだけどな。」


クロの言葉に同意するように、スラ吉が頷く。

森を抜けると、そこには廃墟となった街が現れる。


「うぉ、こんなところに街があったのか。」


街の中を歩いても、人の気配がない。

城らしき廃墟の前に立つ。


「ここ、もしかして、城だったのか。」


『城を建てますか?』


急にウィンドウが出てきて、城を建てるか聞いてくる。

首を傾げながらも、建てることを選択する。

すると、どこからか金槌が出てきて、廃墟の城を叩き始める。


「え、何、壊すのか?」


『城を修復中です』


クロの疑問にウィンドウが答える。

数分立つごとに、城が完成していく。


「後どれぐらい時間がかかるんだろう?」


『後一時間です』


「そっか、じゃあ、街の探検でも行くか。」


城の完成を待つ間、街の探検に行くようにしたようだ。

少し歩いていると、武器屋らしき空き家があった。


「そういえば、武器がないな……。」


クロは武器を求め、武器屋へと入って行く。


「えーっと、剣がないかな……。」


倉庫の中を探していくと、一本の剣を見つけた。

鞘とベルトを身に着け、剣を鞘へと納める。


「よし、剣は見つかったし、そろそろ戻るかな。」


武器屋を出て、城のところへ戻る。

すると、そこには立派な城が修復されていた。


「うおー! 完全に城じゃん!!」


『城の名前を決めてください』


「城の名前か、なら『エレトリック城』とかどうだ!」


ウィンドウは承知しましたと言うと、そのまま消えた。


「スラ吉、今日からここが俺達の居場所だ!!」


クロの言葉に、スラ吉は嬉しそうに伸び縮みする。

今度は、街の修復へと取り掛かる。


「まずは、武器屋からだな。」


武器屋の修復に取り掛かる。

さっきの城と同じように、金槌が武器屋を叩き始める。


「次は酒場だな!」


酒場も同じように修復しようとするが、金槌が出てこない。

すると、ウィンドウが出てくる。


『今のレベルでは、一か所が限界です』


「じゃあ、レベルを上げないとだめなのか。」


ウィンドウの言葉に、クロはふむと、手を顎に当てる。

少し考えると、スラ吉にお留守番を任せ、森へと戻って行った。



「よーし、モンスター出てこーい!!」


クロは森の中でレベルを上げる様だ。

大声を上げ、モンスターを挑発する。


「ゴブゴブゴブ!!」


一体のゴブリンが出てくる、そのゴブリンは仲間を呼んだようだ。

仲間が増えたゴブリンは、クロをあざ笑うかのように煽っている。


「その選択、後悔すんなよ!!」


クロは腰に差していた剣を抜く。

そして、一匹のゴブリン目掛けて剣を振り下ろす。

その剣技は速く、ゴブリンは避けることができずに、一刀両断される。


「ゴブ!?」


残りのゴブリンは焦っているようだ。

そんなことは気にせずに、クロは残りのゴブリンを斬り伏せる。

ゴブリンたちは避けることができず、その場に倒れ、ドロップアイテムを落とした。


「ゴブリンの角に、おっ! 棍棒じゃーん! ラッキー!」


手に入れた棍棒を背中に背負い、森の中を歩いていく。

すると、クロは何かを臭い、鼻を利かせる。


「血の匂いがする……。」


クロは、臭いがした方向へと走りだす。



一人の男が、腹部を押さえながらその場に座り込む。

息は切れており、お間にも倒れそうな感じだ


「クソっ……、深手を負ったか……!!」


男は、小瓶に入った液体を飲む。

すると、出血は止まり、傷口がふさがっていく。


「傷口は塞がったが、疲労は残っているか……。」




「居たぞ! あそこだ!!」


「見つかったか……!!」


一人の騎士らしき男が、男を見つけ声を荒げる。

男は騎士を見ると、立ち上がり、剣を抜く。


「見つけたぞ、不幸の騎士『エルフォード』!!」

「さぁ、俺達にやられてもらおうか!!」


エルフォードと呼ばれた男は、騎士の言葉に耳を貸さず、剣を向ける。

騎士たちはニヤニヤと笑っている。

エルフォードは疲労で、その場に跪いてしまう。


「クソ……、此処までか……。」


諦めて目を閉じた。

その時――


「待てーい!!」


クロがエルフォードの前に現れる。

騎士たちは、クロの登場に驚いている。


「お前ら、一人に対して卑怯だろうが!!」

「な、何だ!! 貴様は!?」

「俺はクロ!! 通りすがりの助っ人だ!!」


クロは剣を抜く、騎士たちもそれに応じて剣を構える。


「助っ人だか何だか知らないが、邪魔をするなら、貴様もきえてもら――」

「喰らえ!!」


騎士の言葉を遮って、クロは棍棒を騎士に投げつける。

棍棒は騎士の顔面に、クリティカルヒットする。


「な、何て卑怯な……!!」

「大人数で来るお前らの方が、卑怯だろ!!」


苛立った騎士たちは、クロに向かって走り出す。

クロは、襲い掛かる騎士を華麗に躱し、斬り伏せる。


「ば、ばかな……!!」

「おい。」


残った騎士に、クロが声をかける。

この声は低く、ドスがかかっていた。


「二度と俺達の前に現れるな、現れたら――」



殺すぞ?


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


騎士は、悲鳴を上げて逃げて行った。

それを見届けたクロは、殺気を消し、エルフォードに近づく。


「えっと、大丈夫か?」

「貴方はいったい……?」

「とりあえず、自己紹介をしようか。」


クロは自分のことを紹介し、これまでのことを話す。


「貴方は猫で、今は人間であると……。」

「そういうことだな。」


クロのことを信用したエルフォードは、自己紹介をする。


「私はエルフォード、とある国の騎士をしておりました。」

「さっき、不幸の騎士とか言われていたけど?」

「それは、私が嵌められたからです。」


エルフォードの話によると、エルフォードはその国では知らぬものなどいない騎士だった。

しかし、それを妬んだ一人の騎士が、エルフォードに罪をかぶせたという。

その罪は、仲間を殺した罪だということらしい。

毎日、一人が死んでいき、エルフォードの近くにいた人が死んでいったという。


「こうして、私は国を追われ、不幸の騎士と……。」

「そんなことが……。」

「助けてくれたことには感謝します、私はこれで。」


エルフォードはクロに迷惑が掛からない様に、その場を去ろうとする。

すると、クロは提案をする。


「じゃあさ、俺達と来なよ!!」

「え?」

「すぐそばに、廃墟が多いけど俺達の街があるからさ!!」

「でも……。」


クロの提案に、エルフォードは行きたそうにしているが、抵抗してしまう。


「大丈夫、俺達と言っても、俺とスライムだけだからさ。」

「……では、同行してもいいですか?」

「もっちろん!!」


クロとエルフォードは街へと行くのであった

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