七夕星々

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

七夕星々


 『……。本日の天気は快晴。日差しが強く、洗濯がよく乾きます。……』

 『昨日まで四日連続の強い風と雨だったので久しぶりの晴れ、しかも快晴ということで。夜には夏の大三角と天の川ががきれいに見えそうですね。……続いてのニュースはさくじつ……………』

 

 少女は大きく頷いてから振り返り男性に話しかけた。

 

 「おとうさんおとうさん!」

 「なんだい星亜。」

 「きょう、おてんきがいいから、おほしさまみにいこ!」

 「織姫様と彦星様を見にかい?」

 「うん!えほんでよんだから!みたいの!」

 「そうだね。夜には晴れてるだろうし、見に行こうか!」

 「うん!」

 

 少女は元気に返事をして、早速とばかりに準備に取り掛かった。

 

 「まだ早いよ、星亜。星を見れるのは夜からだし、星がよく見える丘までそこまで遠くないから。」

 「え〜。いますぐいきたいぃ。」

 「ん〜流石に早すぎるし……。そうだ、星亜、友達誘ってみたらどうだ?友達がいるともっと楽しめるだろうから。」

 「もっとたのしい………。わかった!モモカちゃんととミライちゃんとケンタくんと…えーとえーと。…よんでくる!」

 「あぁ。お友達のお父さんとお母さんにもよろしく言っといてくれ。」

 「うん!いってきます!」

 「行ってらっしゃい。」

 

 そう言って少女は玄関からかけて団地の階段を降りていった。

 少女は家々に行き、星を見に行く約束をした。

 その後、少女は少女の両親と星の話をしながら時が過ぎるのを待った。

 

 一家が出発しようかとしたとき……時刻は夕方、突然、辺りは暗くなる。人の時は一瞬止まり、すぐに先刻よりもひときわ強い慌ただしさを取り戻す。少女もその一人だ。

 

 「おとうさんおかあさん。なにが、、なにがおきたの?」

 「どうやら停電が起きたようだね。」

 「そうね〜。困ったことになったわ。」

 「こまったってなにが?」

 「信号がつかないから車で行くのが危ないんだよ。」

 「えっ。やだ!いくの!」

 「そうはいってもねぇ、明日とかじゃだめなの?」

 「だめ!織姫と彦星はきょう、あうの!きょうじゃなきゃだめなの。………」

 

 と言って少女は小部屋に籠もってしまう。

 

 少女は部屋で絵本を抱いて泣いていた。しばらくしてなにか心を決めたような目をした。

 

 「おかあッさんとッおとうさんッがいなッくてもッいくもん!」

 

 少女は涙を拭きながら、そう部屋に言葉を残し、少女の両親に気づかれずに出る。少女は明かりを持っているが、光を薄れさせるように外は夜に染まっている。

 

 少女は程なくして公園に着く。明かりを消そうとした途端、少女は数人に話しかけらる。

 

 「セイアちゃん、あたしとほしをみよ!」

 「なんでここに?!」

 「まどからひかりがみえて、みたらセイアだったから。」

 「ママにだまってきちゃった。」

 「みんなでみるほうがたのしいって!おしえてくれただろ!」

 

 少年少女たちは一人の少女に言葉を掛けた。一人の少女は一瞬泣きそうになるが、すぐに笑顔を見せる。

 

 「うん!!ありがとう!!」

 

 少年少女たちは次々と返事を返す。

 

 「じゃあ、あかりをけすよ。」

 

 スイッチを押す音がして少年少女たちの目の前は暗くなる。しだいに目がなれてくるとはち切れんとする程の満天の星が広がっている。そのまま辺りに無音が流れる。

 

 「きれい………………。」

 「あぁ………。」

 「うん………。」

 

 すると後ろから聞こえる足音に無音がかき消さる。足音の主は、心配そうな顔をした彼らの親である。子どもたちはにざわめきが入る。

 

 「………ご、めんな、さい………。」

 

 子どもたちは口々にそう言って頭を垂れる。大人たちから溜息をつく音が聞こえる。そして、星亜の父親は一歩進んで少女を抱きしめる。

 

 「何もなくてよかったよ。」

 

 その顔には安堵が映っている。

 

 「ごめんなさぁい」

 

 少女は涙を流しながら父親を抱きしめた。釣られるように子どもたちは涙を流した。

 

 そのまま彼らは落ち着いていく。星亜の父親は上を見上げる。

 

 「それにしても、今日の星はきれいだな。」

 

 少女は目を見開き驚いた顔をするが、すぐに大きく頷く。

 

 「いつもよりもすごくキレイにみえるの!だからね、だからね、………いっしょにみよ!」

 

 「あぁ、みんなで見ようか。」

 

 電気を消して、そしてその場にいる皆が空を見上げる。闇に目をならすよに。ゆっくりと表情が明るくなってくる。

 

 「セイアちゃん。すごくきれいだね。」

 

 名を呼ばれた少女の目からの、涙で火照った頬を濡らす。星空を見上げる少女の目には、たくさんの光の粒が輝いている。ニつの星が最も輝いている。

 少女は溢れんとする程の満開の笑みを広げる。

 

 「うん。すっごくすっごく……

  …きれいだよね。」

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七夕星々 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro

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