第九章 王子と卒業パーティ 214話
「あなたも来年から生徒会の一員。ゆくゆくは私の後に生徒会長を任命されるのよ。よかったわね、学年1位が取れて」
姉の嫌味を受けながら、明日の卒業パーティ会場(貴族専用会場)で打ち合わせを終えた。俺は王族として必ず出席しなければならないのだが、そこに学年1位の立場がつくかつかないかの差は激しい。
各学年、成績上位者3名まで卒業パーティで表彰される。上位3名は必ずパーティに出席しなければいけない。そして、王族である俺は1位でなければいけないプレッシャーといつも戦っているのだ。
1年生の座学1位 俺
1年生の騎士コース1位 俺
むなしい。
分かってる。全てレイシアに負けているのは。俺は正々堂々と勝負をし負けた。そして武術は勝ち逃げされた。しかし、学力は勝つことができる。だから俺は正しい成績を発表してほしいと頼んだんだ。しかし……。
「貴族対応コース、1つも取っていないあのレイシアがパーティにでてやらかしたらどうするんだ? それに、また制服で来るぞ。王家・貴族の大物が集まるパーティに。アレのためでもあるんだ。もちろん我々のためでもあるが」
確かに。そう言われては仕方がない。教授たちは入園式の追いかけっこがトラウマになっているようだ。その他でも目立っていたしな。主に悪い方で。
そんな会話を思い出しながら、準備中のパーティ会場を後にした。
◇
「………………これからも、我が一年生は先輩たちを見習い学生生活を励んでまいります。1年主席、アルフレッド・アール・エルサム」
会場から拍手が起こる。さすが王子という言葉があちらこちらからこぼれる。
違う。ここにいるのは俺じゃないんだ。そんな気持ちになりそうなのを押さえ俺は席に戻った。隣に座る3位のガーベラが俺を見つめている。入学前に比べたらだいぶましになった侯爵令嬢。でもその席にいられるのは繰り上がったからだ。こいつらは知らないんだろう。俺より上がいることを。
型通りの挨拶が終わり音楽が流れる。卒業生のトップたちがワルツを披露する。
一曲披露が終わると、全員が起立し学園長の音頭のもと乾杯が行われた。卒業生にはワインで。在校生にはジュースで。
「「「カンパイ」」」
楽団が音楽を鳴らす。人々は自由にパートナーを見つけダンスを楽しんでいる。
歓談するもの。食事をするもの。
(つまらないな)
俺の下にも、挨拶をする者やダンスをねだる者が来る。
(ため息ついたら駄目だよな)
俺は笑顔を張り付けて、さわやかに対応し続けた。姉をみると同じ顔をしている。明日は俺、当たられるんだろうな。
誰と話しているのか興味も失せながら対応している俺は、ふと
(ここにレイシアがいてやらかしてくれたら楽しいだろうな)
と、ヤツの顔を思い浮かべてはニヤついた。
以下読まなくてもいいです。
……………………ちょっと説明……………………
パーティ会場は数か所に分かれています。
高位貴族用
法衣貴族用
騎士爵用
その他卒業生(仕事により数か所に分かれます)
聖女は高位貴族や法衣貴族など立場によって会場が変わります。
学年トップ3は、身分に関係なく高位貴族の会場に座らせられます。
騎士コーストップ3は、騎士爵の会場に入れられますが、王子はかぶっているので繰り上げで4位の者が行っています。
高位の父兄に顔を覚えてもらう、爵位によっては他の貴族に子女を自慢する、などの特典があるわけです。
教師がレイシアにトップを取らせたくなかったのは、このためでもあります。騎士コースに行けば可愛がられてもらえたかもしれませんが、レイシアにとってはどうでもいいこと、むしろ厄介なことになるので、レイシア含め全員が丸く収まりました。
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