第4章  二大政党の確立

 キャンサー・パーソン人口がマイノリティーからマジョリティーになるまで短期間であったこともあり、我が国の政治は当初混乱したが、じきに明確に二大政党化した。もちろん従来の人間(原生人間)を中心とした〝規律制御党〟と、キャンサー・パーソン(進化癌人間)を中心に結党された〝自由発展党〟だ。両者の利害はことごとく対立したため、我が国にようやく真の二大政党が確立された。

 規律制御党は相変わらず原生人間の少子化と人口減に苦しみ、党勢は落ちる一方だった。依然、いかに出産数を増やしていくかが、重点課題であることに代わりが無かった。逆に、自由発展党は増え続ける人口増に苦しみ、やむなくその党名に反して出産制限を設け、党員間の争いも多くなっていった。

 それよりも深刻なのは、増え続けるキャンサー・パーソン化したい原生人間の規制だ。当初はキャンサー・パーソンの顔を醜いと感じていた彼らも、不老不死の誘惑には勝てなかった。このままでは人口爆発が始まる。キャンサー・パーソン人口の抑制は規制せざるを得なくなっていた。この点においては、減少を続ける原生人間の規律制御党とキャンサー・パーソン人口爆発に悩む自由発展党の利害が一致した。そしてついに、二大政党の連立政権が生まれた。共通政策はなんとつまり〝癌撲滅〟 だ。自己矛盾では無い。なぜなら不老不死化したキャンサー・パーソンたちに子は不要だから。

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